政治における「利益相反」問題を考える
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
森友・加計学園問題が投げ掛ける「利益相反」という論点
政治における「利益相反」問題を考える
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏が、森友・加計学園問題が投げ掛ける、利益相反という点について解説する。利益相反を避け、専門的な判断がゆがめられないようにするためには、関係者はクリーンハンドでなければならない。利益相反問題を突き詰めていけば、家族や友達を意思決定から排除することも必要になる。
時間:10分21秒
収録日:2017年7月24日
追加日:2017年7月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●お友達であれば全て駄目なのか


 政治における「利益相反」という問題について、お話しします。森友学園と加計学園の問題では、議論すべきことがいくつかあります。例えば、誰が真実を語っているのか、嘘をついているのは誰か、不正確なことを言っているのは誰か、という問題があります。これは国会で議論されています。あるいは、文書管理が省によって異なっているとか、文書管理のルールを改めて作り直すべきだ、という問題もあります。しかし今日は、利益相反の問題だけにしぼって、お話しします。

 7月10日の閉会中審査において、加戸守行・前愛媛県知事が、次のような発言をしました。

 「加計学園が、たまたま愛媛県会議員の今治市選出の議員と加計学園の事務局長がお友達であったから、この話がつながれてきて飛び付きました。これも駄目なんでしょうか。お友達であれば全て駄目なのか」

 友達であれば駄目なのかどうかというのが、今日の話の焦点です。つまり、利益相反問題についての非常に狭い範囲でのお話です。ただし、今回は民法が規定する利益相反から、政治の世界の利益相反にまで、拡大させてお話ししましょう。


●利益相反の防止には、大掛かりな仕組みが必要である


 通常、利益相反は、複数の当事者がいる場合、一方の利益となり、かつ他方の不利益となる行為のことを指します。利益相反が起きないようにするため、具体的には、自己代理、双方代理は禁止されます。

 双方代理の禁止とは、例えば弁護士事務所が、被告と原告、両方の弁護はできないということです。弁護士事務所にしても、会計事務所にしても、双方利益にならないようにするために、相当なファイアウオールを設けるなど、あたかも別事務所の形をとるような大掛かりな仕組みが必要です。さもなければ、同じ事務所が、被告と原告の両方を引き受けることは不可能なのです。

 また、官僚は天下りが禁止されています。発注者である官僚が、受注者である業者に天下りするのは、利益相反に当たります。政治の世界では、これが問題となってきました。


●政治の倫理はクリーンハンドである


 それでは、友達の場合はどうでしょうか。総理大臣と加計学園の理事長が腹心の友であるということ、これは利益相反なのでしょうか。「李下に冠を正さず」と、よく言われます。公平公正な判断が妨げられるかが問題で、これは内実の話...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新