選挙結果の読み方
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本の選挙は過半数でなく3分の2がポイントとなる
選挙結果の読み方
政治と経済
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
今回の選挙は「現状が肯定された選挙」だと曽根泰教氏は語る。それは果たしてどのような意味か。投票前に、曽根氏が選挙結果の読み方について語る。
時間:14分48秒
収録日:2014年12月11日
追加日:2014年12月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●自民党の議席最大化戦略が見事に当たった選挙


 それでは、選挙についてお話しします。今回は、選挙結果をどう読むかという話です。

 今回の選挙は、総じて関心が薄く、投票率も前回ほどではなさそうです。これをどのような選挙だと読んだらよいのか。一つは、以前のお話で示したように、選挙戦術上、野党の準備不足を見越して解散時期を決めたという意味で、自公、特に自民党の議席の最大化という戦略が見事に当たった選挙だと言えるでしょう。

 その選挙戦術が成功した後ろ側に何があるのでしょうか。野党は準備不足で、いつでも政権を取れる準備ができていませんでした。候補者調整ができておらず、野党乱立状態で、前々回、政権交代があった際に共産党は候補者を出さなかったところがありましたが、今回は小選挙区にもほとんど全員候補者を立てています。それから、第三極を狙って存在感を示そうとする政党には離合集散がありました。結果として、今回、民主党の増加はそれほどでもないだろうと思います。現状維持か少し多い程度でしょう。維新の党と次世代の党、生活の党は極めて厳しい状態で、生き残りが難しくなってきました。

 候補者調整ができたところを見ても、候補者を比較すると、総じて自民党の現職が強いようです。以前から、小選挙区は風が吹くと揺れ幅が大きいと主張する方がいますが、もちろんその側面があると同時に、小選挙区は現職が強いとも言えます。今回は、小選挙区の特徴のうち、再選確率が高い面が現れそうだと見たらよいのではないかと思います。


●3分の2を確保したら、突き崩しは難しくなる


 では、選挙の結果をどのように読んだらよいでしょうか。まず前提として、衆議院の過半数を取った党は首相を指名することができ、その首相が内閣をつくり、政権を握ることができます。これが日本の衆議院選挙の目標、目的で、アメリカの下院も同様です。しかし実は、これは政権運営の必要条件であって、十分条件ではありません。政権を握ることができても、政権運営に支障を起こさないようにするためには、参議院の過半数も握る必要があります。

 私もかつて、日本の政治は、衆議院で単独もしくは連立で過半数を握ることが条件だと教科書に書いてきました。しかし、それができても、参議院で多数を握らないと、法案は通りません。野党に特例公債などを人質に取られて、“解散をしろ”“首...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
政治学講座~選挙をどう見るべきか(1)選挙の意味
選挙と政治権力…「選挙に勝つ」とはどういうことか?
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将