●いつの時代でも問われる税の公平性
「貞観三年」ですから、3年経ったということです。「詔(みことのり)有りて、関中」、関中は前にもありましたが、函谷関以西の長安の周りに、「二年の調税を免じ」、2年間税を払わなくてよしとしたわけです。それから「関東」というのは、函谷関の東のほうは、「給復すること一年」で、そちらは1年間にしました。要するに、それほど甚大な被害ではなかったので、そちらは1年免税するということです。
そして、「ああ、免税なんだ、税を払わなくていいんだ」「税金はなしだ」と言って喜んでいたところ、すぐ「尋(つ)いで勅(みことのり)」がまた発布されて、「已(すで)に役し已に納むるは」となります。この税金というのは2通りあり、要するに自分で穫った作物を納めるというものと、それから兵役・労役に就くというものの2つありました。
あとのほうを「丁男(ていだん)」と言います。ええ、と、これは簡単に言うと、成人になった男性には、国家がそれなりの税金とか兵役・労役を要求することになっていて、その決まりを言っています。
「已に役し已に納むる」、ですから、すでに労役をやってしまった、労役にとられて労働をやってしまったとしても、労役はスタートしているわけなので、例えば道路を今年1年でつくるというときに、その道路をつくる役割としてそれを与えられたことになりますから、そうすると1年ずっとやらなければならず、それは免除しないということです。つまり、すでに労役に就いた人間はそのまま続けてくれということなのです。
「已に納むる」、要するに、税金を納めるにしても、当時、一度に納めるということは無理ですから、何期分、何期分と分割します。ですから、1期分をすでに払ったという人には、その年は全部払い終えてくれというもので、「已に役し已に納むるは、並びに輸納し了(おわ)らしめ」と、納入を1年間ちゃんとやってくれれば、「明年」、次の年は、「総べて為めに準折」というように、本来は納税しなくてもよいという免税だったのを、労役、それから税を払ったのだから、次の年はそれを勘案して、それで「準折」というのは、差し引いてということですから、減税、減免しますという意味です。このように発布したというわけです。
●鳩でさえも子を平等に育てる
そのようなときに、「給事中魏徴」、魏徴という側近が、すぐに「上書して諫めて」、太宗にこう諫めて、「臣伏して八月九日の詔書を見るに」、8月9日にまず減免、税の免除を出したとき、「率土」、天下中、国土中ということで、「皆給復すること一年」とあります。
合計すると、全土1年、税を免除するということになったのを聞いて、「老幼相歓び」、幼い子供からみんな喜び、「或は歌ひ且つ舞ふ」というのは、国民中が、「よかった。税が免除された」と言ってみんなが喜んだというわけです。
ところがすぐに、今度はお触れが来て、「勅有りて、丁已に役を配せるは、即ち役をして満たしめ」、つまり、兵役に就いている者はそのまま兵役、それから労役に就いている者はそのまま労役をずっと今年1年続けるということです。
それから「折造の余物」は、祖税あるいは租税に代わる農産物とかを納めた人は、「亦(また)、輸し了(おわ)らしめ」、1年間ずっとそのまま納めて、「明年に至るを待ちて」、来年まで待って、「総て為めに準折せしむ」、来年調節するので、今年1年はそれをずっとやることになったということです。
それでどうなったかというと、「道路の人」、行き交う人が、「咸(みな)、望む所を失ふ」です。「税の免除と言っておきながら、これから全部納めろというのでは冗談も甚だしい。ぬか喜びになってしまった。なんという政治だ」とみんなが言っているということを、側近が太宗に上申するわけです。
そして、「此れ誠に万姓を平分」というように、すでに納めてしまった人も、納めていない人も平等に扱うというのが公平で(「万姓を平分」とはそういう意味で)、「七子を均同(きんどう)にす」と、昔から言われていることで、「七子を均同にす」とは、『詩経』に出てくる話です。
私は鳩を飼ったことがないので分かりませんが、『詩経』に「鳩の子育て」という詩があります。その中に、7羽の小鳩を親の鳩が養うときに、朝、小鳩に口から口へと餌を与えますが、そのときに生まれた順番に並ばせます。つまり長男、次男……ということです。実際、鳩がそうするのかは知りませんが、そのように並ばせて順番に長男から餌をやるというのです。
それから夕方の餌はどうするのかというと、今度は小さいほうから並ばせて餌をやるのです。このよう...