徳川家康と貞観政要
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
弘文館と昌平黌…儒学を基盤にして幹部の知性を底上げする
徳川家康と貞観政要(3)文治政治の象徴「弘文館と昌平黌」
田口佳史(東洋思想研究家)
太宗の唐王朝でも、徳川家康の江戸時代でも、武断政治から文治政治に転換するのはたやすいことではなかった。そこで、そのための基礎として、太宗は正殿の隣に文治政治を象徴する「弘文館」を建設した。家康はそれに倣い、やがて上野の山に学問所ができたが、それがのちの「昌平黌(昌平坂学問所)」である。そこで、国家を運営していくための人格・教養を身につけていったのである。(全9話中第3話)
時間:8分27秒
収録日:2020年1月11日
追加日:2023年3月26日
≪全文≫

●正殿の隣に文治政治を象徴する「弘文館」を建設


 それでは武断政治から文治政治になるということですが、これはどのように進めていったのでしょうか。そこが表れている文章が次です。崇儒学第二十七、第一章というところです。

 「太宗初めて祚(そ)を践(ふ)み」とありますが、これは「践祚(せんそ)」といって朝廷の頂点に登ることを言います。これは覚えておいたほうが便利です。践祚をもってとか、践祚してとか、そのように言います。天主の位に就くこと、すなわち即位をしたということですが、そのときに正殿があります。朝廷の本館のようなもの、または本社みたいなものです。

 本社の建物、つまり本館の建物がありますが、その左にまったく同じ規模の建物があるということです。例えば、総理官邸があって、もう一つ総理官邸と同じ規模の建物を建てたのです。なぜでしょう。それは弘文館という宮殿ですが、実は宮殿と言いながら、これは学校なのです。武断政治から文治政治に変わることを実感させるためには、どうしたらいいかを徹底的に考えたのではないでしょうか。

 そのときに、武器弾薬とか戦いに使ういろいろなものを華やかに、いってみれば軍事パレードのようなことをやるのですが、ということは、まだ武断政治をやっている国ということです。そのようなことから、文治政治になったことを象徴するために何をするかというと、政治のシンボルである総理官邸と同じくらいの大きさの学校がその隣にあるとしたら、この政権はそちらにすごく力が入っているということが、誰が見ても明らかになるのです。

 したがって、この弘文館というものを隣に建てた瞬間に、「ああ、太宗はもう戦いはやめようと言っているんだな。これからは人格・教養だな」と、誰もが思うようにしたわけです。


●儒学を国家運営のベースにした徳川家康


 そこで、徳川家康はこれをどのようにやったのかというと、ご承知の通りに、家康は同じことをやるわけです。(のちに)上野の山に学問所をつくります。今のお茶の水のところに移ってから「昌平坂学問所」と言いますが、それまでは「昌平黌(しょうへいこう)」というものです。昌平とは何かというと、孔子の出身地です。ですから、これからは儒学を重視して国家を運営していくということです。このように、太宗と同じことをそのまま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司