徳川家康と貞観政要
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
民を守り、公平に運用せよ…家康が力を入れた法整備とは
徳川家康と貞観政要(5)法整備の重要性
田口佳史(東洋思想研究家)
教育以外にも治政において重要なものは他にもある。徳川家康も太宗も非常に力を入れたのが法整備、つまり法律である。民のための法律をつくり、それを正しく運用してこそ平安の社会が築ける。今回の講義では、太宗と家康の法政策について学ぶ。(全9話中第5話)
時間:14分15秒
収録日:2020年1月11日
追加日:2023年4月9日
≪全文≫

●徳川家康は太宗から法整備の重要性を学んだ


 もう一つ、徳川家康も太宗も非常に力を入れたのが、法整備です。これは隠されてあまり言われませんが、要するに法整備をしました。法律をどのように扱ったのかということを、論刑法第三十一、第二章、ここで言っていますから。

 「貞観元年」ですから、太宗が位に就いてすぐです。「太宗、侍臣(じしん)に謂ひて曰く」というように、部下にこう言ったというのです。「死する者は再び生かす可からず」、一度死んでしまった人間を生き返らせることはできない。これは重大問題だというわけです。したがって、「法を用ふること、須(すべから)く務めて寛簡(かんかん)を存すべし」で、「寛簡」は寛大です。それから簡約、重点主義ということです。これを努力しなければいけない、努めなければいけないというのです。

 「古人云ふ、棺(かん)を鬻(ひさ)ぐ者は、歳の疫あらんことを欲す」とは、棺桶屋はその年に疫病が流行ることを心の中では願っているということです。疫病が流行って死者が出ないと棺桶が売れないから、疫病が流行らないかなと棺桶屋は思っているというわけです。

 それは「人を疾むには非ず」で、人を憎んでそう言っているのではなく、「棺の售(う)るるを利するが故なるのみ」というように、棺桶が売れることを望んでいるからだということです。世の中は全てそういうもので、自分の商売によって、一見その商売がうまくいくということは、人間が不幸になることだってあり得るのだということです。

 その最たるものが、法律を扱う人間なのだと言っているわけです。これはすごいことです。法律を1つ間違って使われたら、死刑になってしまいます。そういう例は歴史的に非常に多く、実際にそういうものなのだということです。

 ですから、法律を扱う人間は、このような棺桶屋になってはいけませんが、知らず知らず法を扱ってくると、法を使いたくなって、この刑罰に処したくなってしまうのだということを、ここで言っているのです。ですから、そこをいつも冷静に、自分を客観的に見る必要があり、それが重要なのです。

 例えば、犯罪人を取り締まる役割の人に、仕事に励むように言ったとき、それがいかに検挙率を上げるかということだけになってしまうと、無罪の人...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(4)社会課題の解決に取り組む人財産業
メダカの学校・総合的な学習(探究)の時間・逆参勤交代
小宮山宏
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子