徳川家康と貞観政要
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
儒家の思想「天人相関」…天に代わり愉快な社会をつくる
徳川家康と貞観政要(6)人情と天人相関
田口佳史(東洋思想研究家)
儒教に「天人相関」という思想がある。自然現象と人間の行為には密接な関係があるという思想だが、今回は天災による大飢饉が起きたときに太宗が取った政策について、臣下との問答から「長」という立場にある人間が心得なければいけないことについて学んでいきたい。集団の長という役職にある人は、天の代わりとなる仕事をして初めてその職責を果たすことができるという考えである。(全9話中第6話)
時間:11分17秒
収録日:2020年2月8日
追加日:2023年4月16日
≪全文≫

●情がない政治はたまったものではない


 次は、論仁惻第二十、第一章です。

 これも貞観の初めです。太宗が帝位に就いてすぐに周りの側近にこう言いました。禁中(きんちゅう:皇帝がいる宮中)に召し出している女性、いわゆる大奥の女性ということです。その「婦人、深宮(しんきゅう)に幽閉さるるは」とは、まあ言ってみれば人質になっているような状態で、滅多に外に行ってはいけないことになっているわけです。

 日本の大奥も同じで、外出禁止になっていました。それは要するに、幽閉されて閉じ込められているということで、「情、実に愍(あわれ)む可(べ)し」というように、自分の心情からすれば耐えられないので、そのようなことを私はやりたくない、と言っているわけです。

 そして「隋氏の末年、求採することを已む無く」ですから、大奥勤めの女性をどんどん入れて、「離宮別館の幸御するに非(あら)ざるの所に至るまで」、たまに天子が行く離宮という離れがあり、夏の離宮とか冬の離宮があるのですが、そのようなところにも大奥ができて、そこにも幽閉されている女性がいるというわけです。

 「多く宮人を聚(あつ)む」、宮人とはそういう女性で、「此れ皆、人の財力を竭(つ)くす」、その人たちを養うということは、この人たちは非生産的ですから、ただ費やすばかりの人です。その費用はどこから出ているのかというと税金です。ですから、人民が全部養ってくれているわけです。つまり、何かの足しになっているわけでもないのです。

 そして、「今将(まさ)に之を」宮殿から「出(いだ)して伉儷(こうれい)を求むる」、自由にしてやって、それぞれ連れ合い(伉儷)を求めるということです。つまり、家庭生活を営みなさいという意味で、「任せんとす」と言っています。

 「独り以て費を省くのみに非ず」は、朝廷の費用が莫大に必要ですから、それを省くだけではなく、「兼ねて以て人を息す」ということは、要するに人民の心の安らぎを求めているということは人情であると。政治には人情が重要であって、情というものがない政治などはたまったものではなく、何より人情が重要だということを言っています。

 それは今の社会でいえば、AIに人情がありますかということでしょう。そのようなことを佐久間象山も言...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥