『江戸名所図会』で歩く東京~駿河町・本町
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「駿河町と本町」の今昔…健康オタク徳川家康の町づくり
『江戸名所図会』で歩く東京~駿河町・本町(2)薬種店が連なる本町
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
開発の根本になるという意味が込められた本町には、民間の薬種店が連なった。まちづくりの中心に医療を据え、また民間の保護にまわった徳川家康の狙いはなんだったのか。講義後半ではロケに出向き、現在の本町通りと照らし合わせながら、家康の都市設計を深く理解していく。(全2話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分40秒
収録日:2023年6月7日
追加日:2023年9月23日
≪全文≫

●民間の薬種店の保護で実現した医療を充実


堀口 そして、この駿河町よりもさらに前に家康が開発に着手した町がございまして、それが本町の薬種店というエリアなのです。駿河町の1本北側の道筋になります。本町というのは、開発の根本になる町という意味で本町です。この通りは江戸城の常盤橋御門という門から始まっておりまして、奥州街道につながる町なのです。

 家康公は天正18年(1590年)に江戸入りをしたときに、まだ豊臣秀吉の家臣という立場でした。そして秀吉の奥州仕置という、奥州方面の大名たちを征圧するという政策にかなり積極的に関わることで存在感を増していくのです。ですので、江戸から奥州への街道の整備というのが江戸入りをした家康公に任された重要なミッションだったわけです。つまり江戸幕府が開かれる前、秀吉の家臣時代からメイン通りとして整備したのがこの本町筋だったわけです。この本町通り沿いというのは、ある業種の店が集まっていることで有名でございました。何かピンときますか。

―― これは看板を見たほうがいいですね。

堀口 そうですね。

―― これは何と書いてあるのですかね。

堀口 そう、看板などを見ていただくと、「薬種」というふうに書かれていたりするのがわかるかと思います。薬種店、つまり漢方などのお薬を扱うお店が多かったということなのです。家康が本町を整備すると、ここに小田原の薬種商の益田友嘉(ますだともよし)という人が入ってきます。まず江戸城を造る普請工事のために体調を崩してしまう人がいたわけです。そういう人たちのためにお薬を処方したのが始まりと言われています。この江戸城の工事のときは「五霊膏」という目薬が評判だったそうなのです。

―― 需要と供給のバランスではないですが、町普請でたくさん人が集まってきたときに、薬があるというのは大事なことですね。

堀口 はい。やがてこの『江戸名所図会』に描かれている「いわしや」というお店なのですが、こういった数々の薬種のお店が進出してくることになります。路上に面して立派な看板が出ていますが、これを建看板(たてかんばん)と言います。これは官許、つまり幕府が許可をしないと出せない格式ある看板の形なのです。

―― この屋根が付いている?

堀口 そうですね。これが幕府公認の薬種店ということなのです...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ