家康が築いたTOKYO
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
東京が首都になった理由…家康と明治新政府の深慮遠謀
家康が築いたTOKYO(2)江戸に首都を置いた理由
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
今上天皇は2019(平成31)年4月30日に退位されることになったが、翌2020年は家康の江戸入府430年に当たる。この機会に、江戸(東京)が首都としてふさわしかった理由とともに、家康が備えていた世界史的なリーダーシップを再認識しよう、と提案する人がいる。歴史学者・山内昌之氏である。(全3話中第2話)
時間:9分44秒
収録日:2018年4月3日
追加日:2018年5月16日
≪全文≫

●「大名小路」変じて「丸の内」となった大名屋敷跡


 前回は江戸について、ちょうど東京に変わる前段までお話ししましたが、明治の新政府が江戸改め東京を首都にしたのには十分な理由があります。

 まず、江戸が、日本はもとより世界の中でも断然治安がいいことです。これは現在も続いています。それから、公衆衛生の面で非常に清潔であったこと。すなわち、現在の大都市にとって必要欠くべからざる条件が、当時の江戸にはすでに兼ね備わっていたのです。

 もう一つ、当時の江戸には大名屋敷がたくさんあり、新政府はこれを官庁や役所に転用することによって無駄を省くことができたことです。新しい行政司法機構、例えば裁判所や検察庁などに当たる役所も、広大な大名屋敷を転用してつくることができました。

 やがて丸の内や霞が関は官公庁のみならず、企業の本社群をつくり出すことにもなりました。現在も通俗的に「三菱村」あるいは「三菱の場所」と呼ばれますが、三菱の不動産が林立する「丸の内」のもとがつくられたわけです。丸の内は、そもそも江戸の「大名小路」として老中をはじめとする高官たちの屋敷があった地域でした。


●もしも江戸が首都になっていなければ?


 これらに加えて、江戸は参勤交代がありました。参勤交代は、大きな藩であれば千~二千人ほどの単位で、武家の人たちが臨時に江戸へやってきます。その間、江戸における人口は一時的に膨大に膨らみます。その参勤交代の侍たちの需要によって、江戸の商人や職人、あるいはその家族たちの生活は潤い、ずいぶんと豊かになったのです。彼らの食べる食料や飲む酒、彼らが求めるさまざまな雑貨品、また本国へ帰る際のお土産や記念品などの需要が、江戸の町を活気づけ、盛んにする理由となりました。

 もし、江戸が首都になっておらず、京都や大坂(大阪)が首都ということになっていれば、江戸の大名屋敷は無用の長物となり、そこで生活を営んでいた数万から数十万にのぼる人たちは失業や廃業しなければならなかったのです。

 江戸改め東京に首都を置くというのは、このように「百年の計」をきちんと考えた結果です。最初に提案したのは「郵便の父」とされる前島密で、それを受け入れたのが大久保利通だったといわれています。

 明治維新から150年という今年2018年を迎えるに当たって、ずいぶん陰に隠れがちなのは、江戸をつくった家...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ