家康が築いたTOKYO
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
王者の学問はどうあるべきかを示した徳川家康
家康が築いたTOKYO(3)現代に通じる家康の教訓
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
徳川家康の残した言葉は、「堪忍」や「辛抱」ばかりではない。多くの武家が書き残した彼の言動は教養に富み、特に警句や機知に富む寸言ではナポレオンにも引けを取らないと、歴史学者・山内昌之氏は保証する。現代にも通じる、その教訓とはどんなものだろうか。(全3話中第3話)
時間:12分30秒
収録日:2018年4月3日
追加日:2018年5月17日
≪全文≫

●「われ一人腹を切て、万民を助くべし」と言った家康の諦念


 前回は、理想を現実に変える志と粘り強さ、持続性を胸に置いて活動してきた徳川家康の姿に触れました。家康の忍耐力と決断力については、有名な大久保彦左衛門(忠教)が『三河物語』の中で、興味深い言葉を紹介していますが、その言葉に尽きるかもしれません。それは「われ一人腹を切て、万民を助くべし」というものです。

 豊臣秀吉は小牧・長久手の戦いで家康に敗北した後、それでも軍事力や動員力といった実力においては自分の方が上回っていると承知していたため、なんとか家康を上洛させ、臣従させたいと願いました。これに家康の家臣たちは皆、反対します。「これは陰謀・奸計であるから、行けば殺される。よせ」というのです。そのため、秀吉はいろいろ努力をします。まず、布石として旭姫という妹を家康の正室に送りますが、それでも駄目なものだから、今度は大政所である母親を人質同然に、駿河へ送り込みます。秀吉の母親思いは知られていましたから、こうして家康を篭絡しようとしたわけです。

 結果として、家康は覚悟して上方へ上ります。その時、殺されたらどうすると危ぶむ臣下たちに対して、「自分一人が腹を切れば済むことではないか。それによって万民を救うことができ、天下国家が安泰になれば、それもいいではないか」ということを言ったのです。つまり、人々のためには自己犠牲もいとわないという意味でした。

 これは、よくできすぎている話ですから、ただちに美談=史実とは限らないという前提のもと、慎重な扱いを込めて私は言うわけですが、家康にある種の達観、悟りの境地があったことは間違いありません。これは、洋の東西を問わず、現在も過去も、最高指導者にはある意味で必要な資質です。


●「郷に入れば…」だけではない「片葉の芦」の教訓


 家康は、決して和歌や能には耽りませんでした。しかし、歌をつくったり読んだりすること自体への関心や教養は備えていました。『源氏物語』や『伊勢物語』のような王朝文学を好んで読むというわけではなく、『吾妻鏡』などさまざまな歴史書を統治の学として読み、政治家として必要な教養を身に付けることに関心があったのです。

 また、大坂の陣の際のエピソードも知られています。大坂に陣を敷いた時、近くの村に珍しい片葉の芦(葉が片方しかない芦)があると聞き、その芦...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ