将軍家光のリーダーシップ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
徳川家光がしたこと…その最大の功績とは?
将軍家光のリーダーシップ(4)「老中」の形成
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ライバルを排除した家光が直面したのは、「出頭人政治」。戦国の名残を残す家康の遺臣たちを退場させ、将軍直属のシステムを整備することが家光の願いだった。そのために取り入れた制度とその意味、またその先の模索について、歴史学者・山内昌之氏からお話をうかがう。(全4話中第4話目)
時間:11分50秒
収録日:2015年6月30日
追加日:2015年7月30日
≪全文≫

●出頭人政治から幕府システムへ、家光の挑戦


 3代将軍の最大の功労は、職務権限がはっきりしなかった「年寄(後の老中)」について規定を設け、明確にしたことです。出頭人政治を完全に終わらせ、幕府がシステムとして均質な官僚制を確立していくのに一番貢献したのが、3代目の家光でした。

 寛永9年現在の家光の「年寄」は、酒井忠世(61)、土井利勝(60)、酒井忠勝(46)、永井尚政(46)、内藤忠重(47)、稲葉正勝(36)、青山幸成(47)でした。トップの2人は61歳に60歳です。先ほど言ったようにおよそ20歳プラスすれば、いかにこの2人がうっとうしいものであったかが分かります。

 家光としては自前の幹部を使いたい。特に彼が一番信頼していたのは、春日局の息子として、幼少期から疑似家族のようにして君臣関係を築いてきた正勝でした。それで彼を老中に登用していくのですが、その所領は酒井忠世、上州厩橋(現在の群馬県前橋)の酒井家には到底及ばないものでした。

 そのうちに、自分がこの年寄衆から少しずつ権限を奪っていくための策を実行する。それは、将軍といえども人事権を完全に自らが掌握し、自分の好きなようにするのは、なかなか難しかったからです。これは内閣総理大臣とも共通することです。特に戦前の帝国憲法の下においては、内閣総理大臣は各大臣を簡単に罷免したりすることは難しかった。特に陸軍大臣や海軍大臣は、事実上、総理大臣の人事権の外に置かれた存在でした。


●「六人衆」に「少々の御用」を委譲させる困難


 将軍の場合、なぜそういうことになるのかというと、出頭人の時、あるいは秀忠の時から、幕府の権力そのものを担い、支えてきた臣下が多かったからです。父や祖父の代からの功労者に対しては、何かタイミングや失態すなわち原因がない限り、簡単に人事で更迭することはできなかったのです。

 そこで家光がやったのは、「六人衆」と呼ばれる若手の政治集団に権限を与えることでした。松平伊豆守信綱以下の6人に対して、「少々の御用」を支配するように命じた。「少々の御用」というのは何かというと、この後「老中」になる「年寄」たちの持っている権限のうちの一部の御用、一部の権限を果たすようにと言ったわけです。

 ところが、「少々の御用」を果たしていくと言われても「われわれはまだ元気だ」と、61歳や60歳は抵抗...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ