将軍家光のリーダーシップ
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徳川家光が回避した「三代目」が陥りがちな罠
将軍家光のリーダーシップ(2)3代目の罠と宿命
歴史と社会
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏は、3代目はある種の罠に陥りがちだが、徳川家光は自身の努力と幸運によりそれを回避することができた人物だと評価する。では、その「3代目の罠」とは何なのか? また、将軍家光の3代目人生はいかなる問題を抱えてスタートしたのか?(全4話中第2話目)
時間:18分20秒
収録日:2015年6月30日
追加日:2015年7月27日
≪全文≫

●3代目の罠は「先代と違ったことがしたい」


  徳川家光という人物は、3代目という者が陥りがちのある種のトラップ(罠)から、自らの努力と幸運によって、逃れることができたのです。その幸運とは、祖父や父、すなわち家康や秀忠が残した遺産だけではなく、彼らが家光のためにいろいろ気配りしていたことを理解する中で、素直にそれを継承したということです。3代目というのはなかなか屈折感がありまして、それは2代目もあるのですが、偉大なる祖父や父、創業者あるいはその継承者とは違ったことをしたい。または、自分の個性でグループや集団を形成して、祖父や父の代からの年長の、形式的にいえば社員や家臣を煙たく思い、遠ざけようとするものなのです。しかしながら、それができる能力や資質を持っている人はよろしいのですが、かなりのところは、それが失敗してしまうという構図になっている。


●初代は個人力、2代目はネットワーク力


 念のために、一応、徳川の系譜を用意しておきました。今お話しているのは、徳川家康は初代、その家系上は3代にあたる秀忠、これが2代将軍になるわけです。そして、秀忠の跡を継いで3代将軍になるのが家光と、このようにまず系図をご覧いただきたいのです。これは結局、個人と組織、それから将軍と幕府といった関係というのは、例えば現代のどの場合にも基本的に当てはまるようなものなのです。個人と組織、あるいは経営者と会社、または政治家や国会議員と巨大な後援会や支持基盤。ここにまたがるいろいろな問題を示唆しているわけです。

 つまり、初代においては、必ずしもシステマティックにならなくても、個人的な信頼感、あるいはその初代をまさに親分や殿や主君とも仰ぎ尊敬しているいわば忠義の周辺的な人物によって支えられます。初代のカリスマ的な魅力や存在感によって、手づくりで維持することができるのです。ところが、これは代替わりになるとなかなか効かなくなる。ですから、2代目になると多少それを、政治の世界でいえば、後援会として充実させたり、あるいは支持基盤を確保するために、そこにネットワークを張り巡らすような努力をしていくわけです。


●3代目の鍵はシステム、要注意は人間関係


 そして、3代目になりますと、そこでつくられたものをさらに充実化していくためのシステムをもっと深くしたり、制度として充実したものにしようとす...

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