将軍家光のリーダーシップ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
徳川家光が回避した「三代目」が陥りがちな罠
将軍家光のリーダーシップ(2)3代目の罠と宿命
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏は、3代目はある種の罠に陥りがちだが、徳川家光は自身の努力と幸運によりそれを回避することができた人物だと評価する。では、その「3代目の罠」とは何なのか? また、将軍家光の3代目人生はいかなる問題を抱えてスタートしたのか?(全4話中第2話目)
時間:18分20秒
収録日:2015年6月30日
追加日:2015年7月27日
≪全文≫

●3代目の罠は「先代と違ったことがしたい」


  徳川家光という人物は、3代目という者が陥りがちのある種のトラップ(罠)から、自らの努力と幸運によって、逃れることができたのです。その幸運とは、祖父や父、すなわち家康や秀忠が残した遺産だけではなく、彼らが家光のためにいろいろ気配りしていたことを理解する中で、素直にそれを継承したということです。3代目というのはなかなか屈折感がありまして、それは2代目もあるのですが、偉大なる祖父や父、創業者あるいはその継承者とは違ったことをしたい。または、自分の個性でグループや集団を形成して、祖父や父の代からの年長の、形式的にいえば社員や家臣を煙たく思い、遠ざけようとするものなのです。しかしながら、それができる能力や資質を持っている人はよろしいのですが、かなりのところは、それが失敗してしまうという構図になっている。


●初代は個人力、2代目はネットワーク力


 念のために、一応、徳川の系譜を用意しておきました。今お話しているのは、徳川家康は初代、その家系上は3代にあたる秀忠、これが2代将軍になるわけです。そして、秀忠の跡を継いで3代将軍になるのが家光と、このようにまず系図をご覧いただきたいのです。これは結局、個人と組織、それから将軍と幕府といった関係というのは、例えば現代のどの場合にも基本的に当てはまるようなものなのです。個人と組織、あるいは経営者と会社、または政治家や国会議員と巨大な後援会や支持基盤。ここにまたがるいろいろな問題を示唆しているわけです。

 つまり、初代においては、必ずしもシステマティックにならなくても、個人的な信頼感、あるいはその初代をまさに親分や殿や主君とも仰ぎ尊敬しているいわば忠義の周辺的な人物によって支えられます。初代のカリスマ的な魅力や存在感によって、手づくりで維持することができるのです。ところが、これは代替わりになるとなかなか効かなくなる。ですから、2代目になると多少それを、政治の世界でいえば、後援会として充実させたり、あるいは支持基盤を確保するために、そこにネットワークを張り巡らすような努力をしていくわけです。


●3代目の鍵はシステム、要注意は人間関係


 そして、3代目になりますと、そこでつくられたものをさらに充実化していくためのシステムをもっと深くしたり、制度として充実したものにしようとす...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓