『江戸名所図会』で歩く東京~両国
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
花火の掛け声「たまや~」の由来…浮世絵と隅田川の歴史
『江戸名所図会』で歩く東京~両国(2)江戸時代の隅田川と花火
歴史と社会
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
両国橋が架けられた隅田川。隅田川といえば花火大会が有名だが、それは江戸時代から人々に愛された行事だった。隅田川で花火が打ち上げられるようになった経緯や伝承、いまの花火との違いを知り、江戸時代の隅田川の姿に思いを巡らせよう。(全3話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分23秒
収録日:2024年6月5日
追加日:2024年9月29日
≪全文≫

●往来の激しかった両国橋


堀口 『江戸名所図会』に戻ってみましょう。両国橋を対岸に向かって渡っていきたいと思います。

―― はい。

堀口 橋の上にもやはりたくさんの人が出ていますよね。

―― そうですね。この絵で見ても、数えてみたら楽しそうですが、挫折するくらいの数が描かれていますね。

堀口 そうなのです。実際にどのくらいの人数が通るのだろうということが書かれた資料があります。

―― はい。

堀口 これは明け六つから暮れ六つですから、つまり日の出から日の入りまでに両国橋を往来する人数のカウントなのです。これがおよそ2万5000人程度だったといわれているのです。

―― これはすごい数ですよね。

堀口 当時、江戸で人口が100万人の時代ですから、すごい人数が通行していたわけです。

―― はい。

堀口 この絵では花火が上がっていますので、夜の風景です。夜になってもこれだけの往来があったということがわかります。


●一説には死者を弔うためだったともいわれる隅田川の花火


―― というと、夏の花火大会というのが一種の風物詩ですけれども、江戸の花火は、やはり隅田川とか川で行われることが多かったのですか。

堀口 おっしゃるとおりです。両国橋を挟んだ隅田川というのが江戸の花火大会の会場になりました。上流と下流が花火大会の会場だったのです。

―― これはなぜ川でやるのですか。

堀口 もともとは市街地でもやっていたのですけれど、江戸時代の初め頃に、花火は火事の原因になるということで、市街地では禁止になりました。そして隅田川、もしくは海辺などの場所で許されることになったという背景があります。

―― はい。

堀口 8代将軍吉宗の治世である江戸時代の中期から隅田川、両国橋での花火が盛んになっていったということなのです。一説によりますと、当時、大規模な飢饉と疫病が発生しまして、多くの犠牲者が出ました。これは事実なのですけれども、その死者を弔うための花火を上げたのが始まりだという伝承も有名にはなっております。

―― 長崎とかでも、精霊流し(しょうろうながし)とかだと、いまでも爆竹をバンバンとやっていたりしますけれど、やはり花火を上げるのは一種の弔いという意味も持つのでしょうね。

堀口 そうですね。あれだけ大きな音が鳴り、光が出ると...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子