道徳と多様性~道徳のメカニズム
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
未来社会でヒトが道徳を使いこなすためには?
道徳と多様性~道徳のメカニズム(6)未来に向けてどう生きるべきか
哲学と生き方
鄭雄一(東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授)
「道徳と多様性」シリーズの最終回は、いよいよソリューションの提案である。混血児が差別されたり、一つの価値観を強要されるのは、ヒトが「相対的掟」を絶対視しているからである。掟の相対性と絶対性を区別してはどうだろうか、と東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻教授・鄭雄一氏。多様性に富む未来社会で、ヒトが道徳を使いこなすための科学的方法が提案される。(全6話中第6話)
時間:15分00秒
収録日:2016年10月7日
追加日:2017年2月9日
≪全文≫

●混血児にとっての「バーチャルな仲間」は誰か


 最後は、「未来に向けてどう生きるべきか」です。

 バーチャルな仲間の話をしてきましたが、ここで一つ、思考実験をさせてください。今、日本では33人に1人が混血児だといわれています。彼らにとって、右翼的なヒトがよくいう愛国心や民族のアイデンティティなどの概念は、明らかにバーチャルです。試しに、彼らの両親が属する宗教・民族・国家が互いに争っているというシチュエーションの思考実験をしてみてください。

 状況次第で彼らは「君は味方の血を半分持っているから仲間だよ」とも、「味方の血を半分しか持っていないから敵だよ」とも、「敵の血を半分持っているから敵だよ」ともいわれます。ここでは、血の比率は問題になりません、4分の1でも8分の1でも基本的には同じことです。実例として、米国南部には悪名の高い「One drop rule」というものがあり、公にはならないものの、今でも適用されているはずです。これは、家系の中に一人でも黒人がいたらそのヒトは黒人であり、見た目がどんなに白人そのものでも、黒人として扱われて差別されるというルールです。

 ここで分かるのは、混血児をどちらか片方のカテゴリーに押し込めるのは無理だということです。半分であれば2分の1が真実であって、「お前は○○人」と呼ぶのは、無理があります。それが、現実に存在している彼らの居場所をなくしているのです。

 血だけでなく、文化でも同じです。社会を中心に据える考え方が強調されると、往々にして文化の強要が多くなります。「お前はどっちか?」と、踏み絵を踏ませるのです。しかし、彼らにとっては半分なわけですから、「半分です」と言うしかありません。

 このように、ことばに基づくバーチャルな仲間意識はあいまいで、可変的で、相対的な面があるということをよく認識しなければいけません。


●実は出入り自由な「バーチャルな仲間」の範囲


 これが「仲間の構造バージョン2」です。シリーズ前回に紹介したバージョン1(仲間と非仲間)では、ここを非常にきっちりした線で描きました。われわれにはリアルな面識で形成されるリアルな仲間がいます。親、兄弟、親友など、リアルな出会いでできる、とても強固な仲間ですが、多くて数百人で、あまり境界も変わりません。

 ところが、その回りには、ことばに基づくバーチャルな仲間がいて、この...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験
鎌田東二
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「アカデメイア」から考える学びの意義(2)プラトンの学園アカデメイア
プラトン「アカデメイア」の本質は自由な議論と哲学的探究
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子