江戸と現在の教育比較
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
江戸期は「人間らしく」、現在は「子どもらしく」
江戸と現在の教育比較(2)人間の基本を教える
田口佳史(東洋思想研究家)
江戸期に教えたのは人間としての基本であると語る老荘思想研究者・田口佳史氏。子どもは人間としての天分、天性をたくさん持っており、そのことを早く自覚させるため、まず人間とは何かを教えたという。(後編)
時間:10分30秒
収録日:2015年1月13日
追加日:2015年8月10日
≪全文≫

●江戸期は時間がかかることから教えていく


 江戸期の教育において、まず何から教えたかというと、人間としての基本をしっかりと学ぶということです。今はどちらかというと、小学校ではやさしいことから教えるということになっています。しかし、江戸期は、人間の基本から教えました。前回お話しした「初めを慎む」という言葉の通り、一番最初に習うことは、真っ白のキャンバスにさっと入ってくるわけですから、すごく重要なのです。ですから、人間の基本、すなわち、これまで申し上げたような徳の教育から始まりました。

 正課である四書五経の四書の『大学』の冒頭には「明明徳(明徳を明らかにする)」とあり、これは人間の基本を言っているわけですが、最初はそこから教えるのです。

 それからもう一つ重要に考えられていたのは、何しろ早く教えないと元服まで間に合わないため、身に付けるのに長時間かかることから早く教えたということです。そういう意味で、四書五経のまず四書から学んだのですが、面白いことに四書は小学1年生からずっと読むのですが、大学者も研究対象にしているという、非常に特殊なテキストだと思います。こういうものを丹念に読んでいくわけですが、今はその年代年代で必要と思われる知識を教え込むことになっています。

 ということで、江戸期は、人間の基本をしっかり学び、身に付けるのに時間がかかることから教えていくというカリキュラムになっていたのです。


●江戸期は人間らしく、現在は子どもらしく


 また、現在の教育との違いには、次のようなことも挙げられます。

 江戸期はこう考えていました。児童は人間として不完全なものですが、人間の基本というものを学ぶことにおいては全く真っ白なキャンバスです。いってみれば、生まれながらにして人間としての天分、天性をたくさん持っているわけです。そういうものをなるべく早いうちから自覚させ、気付かせていくことが非常に重要です。ですから、児童はより人間らしくなるように学んだのです。つまり、人間とは何か、人間とはどういうもので、どうしていくことが人間なのか、そういったことをまずじっくりと教えるということでした。

 今はどうかといえば、児童はより子どもらしくなるように教えているような状況ではないでしょうか。これは私見ですが、そう思われるわけです。そのため、小学校の高学年になったと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝

人気の講義ランキングTOP10
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
人生はエネルゲイア――AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
これからの社会・経済の構造変化(2)経済的利益と社会課題解決の両立へ
利益か社会課題解決か…かつての日本企業の美点を取り戻せ
柳川範之
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ