道徳と多様性~道徳のメカニズム
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
英語の授業から見えてくるヒトのことばの特殊性
道徳と多様性~道徳のメカニズム(5)道徳とことばの関係は?
哲学と生き方
鄭雄一(東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授)
道徳を科学で見る応用問題の2番目は、「道徳とことばの関係は?」である。ヒトのことばの特殊性がバーチャルな出会いを成立させ、道徳につながった、と東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻教授・鄭雄一氏。英語の授業を思い出しつつ視聴されたい。「道徳と多様性」を科学の眼差しで捉えていく連続講義は、西洋哲学の限界にも迫る。(全6話中第5話)
時間:8分36秒
収録日:2016年10月7日
追加日:2017年2月2日
≪全文≫

●英語の授業から、ヒトのことばの特殊性が見えてくる


 5番目に考えたいのが、「道徳とことばの関係は?」です。察しのいい方は、もうここで、なぜ人間だけこんなに特殊なことができるのかということに関して、恐らくことばが絡んでいるのだろうと推察されたと思います。では、ヒトのことばはどう特殊なのか。これは英語の授業を思い出していただくと分かりやすいでしょう。

 まず、「三人称」です。これは何かというと、今ここにいない第三者の情報を、伝え手と受け手から独立したかたちで扱えるということです。人間のような言語を持っていない動物は、今ここにいない第三者の情報を伝え手と受け手から独立した形では扱えません。つまり、その場にいないと情報を伝達できないのです。第三者や第三者が残した何か物質的なものがないと、情報は扱えないということです。

 もう一つは「時制」です。これは現在以外の時間を使えるということです。

 この二つがあることで時間的・空間的に遠く隔たった、今ここにいない第三者に関する情報を伝達・処理できる、ということになります。厳密な意味でこれができるのは人間だけです。部分的にあるという動物は幾つかあるのですが、時空を完全に超えられるのは人間の言語だけです。


●バーチャルな出会いが生む教祖への親しみ


 ということは、バーチャルな出会いが可能になることを意味します。その典型例は、信徒にとっての教祖です。ブッダはもう2千年以上前に死んでしまっているため、今までにあったことは絶対になく、これから会うことも決してありません。そして、遺伝的に見ると、間違いなく赤の他人です。でも、時に信徒は、自分の親兄弟よりも、この教祖に対して親しみを持つのです。

 アメリカでは、非常に敬虔なキリスト教徒の親がゲイの子どもたちを勘当して見捨てたため、その子どもたちがストリートチルドレンのようになって非常に貧困な暮らしをしているという問題がかつて話題になったことがあります。つまり、彼らはキリストのことばを、自分の本当の子どもよりも大事に思ったということです。

 これが完全な形できるのはヒトのことばだけです。断片的な例として、ベルベットモンキーやミツバチのダンスなどがありますが、よく見ると、時間と空間を部分的にしか超えられていないのです。
 

●ヒトのことばのあいまいさ


 では、ヒトのことば...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎