道徳と多様性~道徳のメカニズム
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
道徳の共通原理を示す命令は「二面性」を持っている!
道徳と多様性~道徳のメカニズム(3)道徳に基本原理はあるか?
鄭雄一(東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授)
東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻教授・鄭雄一氏が「道徳と多様性」について論じる連続講義。今回、考えるのは道徳の基本原理と二面性についてだ。道徳の本質は「仲間らしくあれ」ということだが、そこに二面性があるという認識が重要だと鄭氏は説く。実は、問題はそこにあるのだ。(全6話中第3話)
時間:18分31秒
収録日:2016年10月7日
追加日:2017年1月19日
≪全文≫

●道徳の本質と既存モデルに関する仮説


 では3番目ですが、「道徳に基本原理はあるのか」ということで、これも少し昔の授業を思い出してみてください。これまで何千年もの間、道徳思想には、個人に重点を置くものと社会に重点を置くものがあったわけですけれども、なぜこのように2つに分かれているのか。何千年もの歴史があり、しかも非常に賢い人たちが考えてきたわけですから、全部が間違いということはないでしょう。そこで、私は仮説として、道徳の真の姿と既存のモデルの限界ということで、次のように考えました。非常に単純化していますので、例え話として聞いてください。

 道徳の本質は、例えばこの海苔の缶のような形をした立体である(と考えます)。ところが、上からだけ見ていると丸だと感じますし、横からだけ見ていると長方形だと感じます。これはどちらも部分的には正しいのですし、どちらも真実は含んでいるのですが、実体は立体の円柱です。つまり、(そうした2つの見方はそれぞれ)不完全な評価だったのではないか。そうした仮説を立てました。


●諸宗教に共通なミニマムな掟―人に危害を加えるな


 では、これが本当かどうかということで、道徳の真の姿を推定するため具体的な掟である戒律を調査することにしました。残念ながら個人に重点を置くモデルでは道徳律がないので、調査することはできません。ですから、宗教などの戒律を調査するということにします。

 例えば、仏教の五戒ですが、これについては皆さんの中で知っている方もいると思います。殺してはいけない(不殺生戒)、盗んではいけない(不偸盗戒)、不倫してはいけない(不邪淫戒)、嘘をついてはいけない(不妄言戒)、酒を飲んではいけない(不飲酒戒)というものですが、これらについて調べてみます。その他、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、ユダヤ教など、さまざまな戒律から、まず、共通項はないかということを抽出してみます。

 そうして、主要な宗教の戒律の共通項を抽出しますと、「人を殺してはいけない」「人のものを盗んではいけない」「人をだましてはいけない」は必ず入っており、ざっくりまとめますと、要するに「人に危害を加えるな」ということだと思います。

 参照例として挙げますと、漢の高祖は秦を滅ぼした後、秦の非常に複雑で過酷な法律を全て廃止し、「法三章」だけにしなさいと言いました。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治