道徳と多様性~道徳のメカニズム
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
個人に重点を置くモデルはデカルト以前と以後に分けられる
道徳と多様性~道徳のメカニズム(2)過去の道徳思想はどうなっている?
鄭雄一(東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授)
東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻教授・鄭雄一氏が「道徳と多様性」について論じる連続講義。今回は、過去の道徳モデルを一気通貫、分析する。見えてきたのは、代表的な思想は2つのモデルに分類できるということ。しかし、いずれのモデルも「道徳と多様性の両立」には不十分、という事実だった。(全6話中第2話)
時間:12分53秒
収録日:2016年10月7日
追加日:2017年1月12日
≪全文≫

●過去の道徳思想を調査、分析する


 では、第2章に移ります。前回、現状を分析して問題点が分かりましたので、次に、科学の通法ですけれども、過去の人はどうなっていたのか、過去の文献はどうなっていたかということを調べます。そうしないと、同じことを2回してしまうことになり、すでに回答が出ているかもしれませんので、そこを見てみました。

 過去の道徳思想はどうなっているか。倫理の授業を思い出してください。疑問1(誰が、なぜ、殺人はいけないと決めるのか?)、2(なぜ戦争や死刑では殺人が許容されるのですか?)に対する回答は道徳に対するスタンスになるのですが、大きく2つに割れていました。このことを利用すると、過去の思想もかなりきれいに分類できます。ここの部分は、あくまで道徳(善悪の区別)に関する視点からの分類であって、その人たちの哲学全体に対する話ではないことをご注意ください。また、この論考の目的は思想史ではありませんので、高校の教科書に載っているような代表的思想のみ取り上げます。


●社会に重点を置く道徳モデルー宗教、伝統、習慣


 そういたしますと、先ほどの疑問1、2に対する回答から分かってきたように、1つ目のモデルとしては社会に重点を置く道徳モデルが考えられます。このモデルの内容を1つのステートメントで表すとこうなります。「理想の社会があり、そこで決まった理想の道徳がある」という考えです。スライドでは『東大理系教授が考える 道徳のメカニズム』(ベストセラーズ)のページ数を示してありますので、もし詳細をお知りになりたい方はそちらをご覧ください。

 この典型例は宗教です。全ての宗教はある理想形があって、その中で決まった理想の道徳があるということを、キリスト教、イスラム教、仏教、皆はっきり言っています。


●問答無用で、特定の社会を神格化する


 これとよく呼応して、伝統や習慣に基づく社会でもこういうことがあります。例えば孔子の教えです。周王朝の初期を理想化して、そこに返りなさい、というようなことを説いています。アリストテレスの場合には、彼が生まれ育ったギリシャのポリスの理想的な状態に戻りたい、と言っています。会津の「什(じゅう)」は昔、はやりました。これは「ならぬことはしてはならない」ということを言っていますが、その「ならぬこと」とは伝統や習慣で決まっていることなのです。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦