98歳の医師が明かす「生物学的教育論」
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
他者操作は道徳的に禁止しなければならない
98歳の医師が明かす「生物学的教育論」(8)道徳と自己抑制
井口潔(九州大学名誉教授/日本外科学会名誉会長/医学博士・理学博士)
子どもの健全な成長にとって道徳教育は非常に大事だが、特に自己を抑制するという意識を持つことが重要と、井口潔氏は指摘する。幼年期に必要なのは自己抑制で、そのために道徳がある。しかし、青年期になって道徳を身につけようとすると、その道徳を自分の都合の良いようにねじ曲げてしまうという。それはどういうことなのか。(全9話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分04秒
収録日:2020年1月11日
追加日:2020年8月13日
≪全文≫

●悪い意識を止めるために道徳を置く


―― もう一つ先生にお聞きしたいのが、いわゆる道徳教育です。道徳をいかに教えるかという点も、非常に大事だと思います。日本では先ほど江戸時代の例が挙がりましたが、道徳教育はどのように進めていけば良いでしょうか。

井口 これにはいろいろな考え方があると思います。私自身は、次のような考え方で一つまとめています。先ほどいったように、“ヒト”を人間に変えていくというとき、それをするには何が必要かというと、教育だといいましたね。教育がそれをするというその内容を分かりやすくいうと、自意識を持つ、つまり自分で意識すること。「自意識」というのは、分かったような、分からないような、非常に通俗的な言葉ですよね。

 その通俗的な言葉をここで用いるのには、大きな意味があるのです。人間を含めた動物は全て、環境とよく調和する必要がある。調和しなければ、絶滅するわけです。絶滅するというのは大きなことですよ。要するに、環境と調和するのは、ものすごく大きなことです。

 人間の場合に、環境と調和するとはどういうことか。ある強い意識を持てば、突起が出てニューロン化するわけです。それで、ニューロン回路ができます。だから、ある意識を出すと、それに対応してニューロン回路、すなわち脳ができますね。

 ところが意識には、良い意識と悪い意識があります。善悪の意識ですね。一番はっきりするのは、わがままな意識ですね。人をだまそうとする意識。これも意識のうちです。それらは環境と調和をしないわけです。だから、環境と調和をするような意識だけにしておかないといけません。ということは、自己を抑制すると。

 どの宗教も、自己抑制を道徳の根底においているわけで、自分を抑制するという意識を持って、道徳を守れということです。だから、自分の自覚で悪い意識を止めること、抑制をかけることで道徳を守るということを条件にして意識をすると、悪い意識が入りませんから、良い意識だけでニューロン回路ができます。良い心ができる。それが心的エネルギーを発生します。

―― 心的エネルギー、つまり心のエネルギーですね。

井口 だから、道徳の生物学はそこなんですよ。悪い意識を止めるために、道徳というものをそこに置くと。


●他者操作は一番悪い意識、道徳的に禁止しなければならない


―― 逆に、人間の場合は、悪い...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治