98歳の医師が明かす「生物学的教育論」
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なぜ「生まれたばかりの子はまだ人間ではない」のか
98歳の医師が明かす「生物学的教育論」(2)「ヒト」から人間へ
哲学と生き方
井口潔(九州大学名誉教授/日本外科学会名誉会長/医学博士・理学博士)
生物の体としてのヒトの進化は、チンパンジーまで行き着いてひと段落した。ヒトはその体に巨大な脳を備えた生物として誕生したが、生まれた時点ではまだ人間ではない。しつけと教育によって、人間へと変わっていく。このことは、胎児の期間にできた脳内の隙間が、外界からのさまざまな刺激による脳の発達によって埋められていくという事実からも裏付けられている。(全9話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:7分30秒
収録日:2020年1月11日
追加日:2020年7月2日
≪全文≫

●チンパンジーの体に巨大な脳を備えた生物が「ヒト」


―― では、(前回最後におっしゃった)目からウロコの部分をこれからお聞きしていきたいと思います。まず先生が生物学という見地から人間の教育に着目した理由は、どういった点にあるのでしょうか。

井口 それは、こういうことなのです。まず原子生物学から生物をみていくと、徐々に進化していくなかで、体で生きる生物の存在が分かります。体で生きる生物は、もともとは物質の化合物ですよ。地球の表面上に比較的原子番号が小さい、軽い原子があります。そして、原子が結合すると分子になるでしょう。その分子が、いろいろとあるなかで、たまたま繁殖できる化合物となったものを生物と定義したのです。そうした過程を何度も経て、チンパンジーまで進化していきました。

 チンパンジーまで進化すると、おそらく神様は、もうこれ以上体の仕組みを良くする余裕はない、後はその生物に心をつけてみようと考えたのでしょう。

 高等生物になるとさまざまな行動を取りますが、それは全て、直感でやっている。目の前に何かケダモノが来たと思えば、逃げるか、それとも殺すかは、直感でやるわけです。それを、心がある生物は、それを自分の価値観でやる。そのために、チンパンジーの体に巨大な脳を備えた生物ができたわけです。それが「ヒト」、ホモ・サピエンスです。


●生まれたばかりの子はまだ人間ではない


井口 人間の夫婦が結婚して、赤ちゃんが生まれますね。その時点では、まだ人間の子ではないんです。「ヒト」の子なんです。

―― 生物としての「ヒト」ということですね。

井口 人間が生んだ子が人間の子でないなどと、そんなバカな話はないと思うでしょう。しかし、人間が生んだ子がオオカミに育てられたら、オオカミになってしまうわけです。

―― インドでそのような有名な話がありますね。

井口 だから人間にならないというのは、そういう意味なのです。それが一つ目の目からウロコの点ですね。


●人間だけは人間が育てなければならない


井口 次に、例えばそのオオカミに育てられた新生児がいるとします。その子を人間にするにはどうしたら良いのかというと、しつけと教育。しつけと教育とは、人間が考えることです。人間が生んだ子どもを育てるには、人間の手を借りなければ駄目なんだと。そうしたことは、他の動物にはないわけです...

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