「集権と分権」から考える日本の核心
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契機は白村江の戦い…非常時対応の中央集権国家と防人の歌
「集権と分権」から考える日本の核心(2)非常時対応の中央集権と東アジア情勢
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
律令国家は中国の先進性に倣おうと始まったといわれるが、実際はどうだろうか。当時の日本は白村江の戦いの後、唐と新羅が日本に攻め込むのではないかという危機感から「防人」という徴兵制をつくった。徴兵には戸籍を充実させる必要がある。すなわち当時の東アジア情勢において、国防という非常時対応の必要に迫られたのが、急ごしらえの中央集権国家なのである。(全7話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:11分28秒
収録日:2025年6月14日
追加日:2025年8月25日
≪全文≫

●律令制以前の日本と似た「キエフ大公国」


片山 ここに「非常時対応」と書いていますが、(律令制は)北魏から唐の時代の均田制を一つのモデルにしました。古代の日本において、遣隋使や遣唐使などに倣って日本が知恵をつけていくということを繰り返していたわけです。

 そうやって日本は7世紀に律令国家を形成するわけですが、それがなぜ奈良時代、平安時代につながっていったのかを考えていきます。中国のように皇帝を戴く国が中央集権の政治で成り立ち、官僚制を発達させていくということをしないと文明国ではないからということも、もちろん動機の一つにはあります。

 (これは)明治維新のときに日本が世界に通用する文明国になろうとして、西洋世界の仕組みを取り入れていったのと全く同じ構図です。極東の島国である日本も中国に負けないような文明国になろうとするには、中国の政治や経済や社会の仕組みを導入して、日本を中央集権国家にしていくのが(いいと)。

 (それまでの)豪族がたくさん勝手をやるような緩やかな連合体は、例えばキエフ大公国などもがそうした国でした。しかし、モンゴル人が侵入してきたときに、周囲の公国を集めて戦っても負けてしまった。裏切ってモンゴル側につく人たちも現れ、キエフも廃墟になってしまう(今ウクライナ語では「キーウ」という発音なので、「キエフ」と呼ぶと親ロシア的だという考え方もあるかもしれませんが、とりあえず一般の歴史用語に即してキエフ大公国といわせていただきます)。

 キエフ大公は皇帝ではなく大公だから、ゆるやかな連合体の盟主という感じです。他の○○公国はみなキエフ大公の言うことを聞きますということでゆるやかな連合体を形成していたところへ、モンゴル人が(つまり)チンギスカンの孫のバトゥなどが大群を率いて、ウワッと侵攻してきた。ただ、キエフ大公国はトルコ系の遊牧民などとずっと戦争をしてきました。

 ここで突然クラシック音楽の話になってしまうと何を言っているのかということになりますが、ロシアのオペラにはボロディンの『イーゴリ公』はじめ、いろいろな作品があります。それらは、みなキエフ大公国の時代を題材にしたものです。

 東側にいる遊牧民とキエフ大公国が争っていた頃、イーゴリ公という「大公」の下の位、公国の支配者である「公」がいました...

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