「集権と分権」から考える日本の核心
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なぜ大和の国?…山国島国文化を意識してこそ道はひらける
「集権と分権」から考える日本の核心(6)山国島国文化として日本を意識する
歴史と社会
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
なぜ日本は「大和の国」と呼ばれるようになったのか。古来分権的で小単位の衝突を繰り返していた山がちなわが国において、「和を以て貴しとなす」を理想として掲げ教育しようとしたからではないかと片山氏はいう。近現代の中央集権社会においても、権力の集中や他との情報共有になじまず、多くの組織で縦割りが貫かれてきた。そこには、宿命的ともいえる山国島国文化として日本の性(さが)が現れている。(全7話中第6話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:7分55秒
収録日:2025年6月14日
追加日:2025年9月22日
≪全文≫

●「大和」は、不足を身につけるための名付け


片山 (明治までの日本は)徹底的に分権でやってきて、一つ間違えるとすぐに群雄割拠、戦国的、中央の統制がなくなる状況に陥ってしまう。だから、「大いなる和」の字をあてる「大和」という言い方を日本はするわけです。

 要するに奈良に入るときには、紀伊から行こうが、伊勢からあるいは山城からだろうが、山あいを通って大和の盆地に入るわけです。山があって、「山の門」すなわち山と山のあいだに通れるところがある。そういう場所だから、「山門(やまと)」の国と言っていた。また、山のあるところという意味でも「山処(やまと)」という言葉が成立します。

 これは日本全体の暗喩にもなっていて、あちこちに山があって隔てられているから、すぐ勝手をやる人がたくさんいる。それをかなり力で抑えていっても、古代王権は、豪族たちのゆるやかな連合体に天皇が担がれるという形しかできなかった。

 そういう中で、隙さえあればお互いをつぶし合って争っているのが日本の本質であって、山がちな国の合間合間にたくさん別々にいるのが、大和という──狭くいえば奈良のエリアですが──※王権の確立になった。一番ちゃんと治められているエリアがその辺だから、それがイコール国の名前にもなるということもありますが、日本全体が山がちなので「大和の国」ということで、別に奈良だけではない話として「大和」という言い方をする。通りがいいから「大和」「大和」というように、「和の国」というようなものが成立してくる。

 それは、いがみ合っている山がちなバラバラの国というもので、何かというとすぐ争って殺し合っている国に対して、「和を以て貴しとしましょう(貴しとなす)」と(言われたからです)。そして大和=大いなる和だということになったのは、大いなる和が全然ない、山がちのどうしようもない国だからです。

 「それでは困るから、大いなる和を貴しとしないといけませんよ」といって、大和の国は「大いなる和」になった。もともと日本は大いなる和の国でも何でもなく、大いなる和から一番遠いので、理想として「大いなる和でしょう、やまとは」ということを言って教育しようとしたからこそ、こういう漢字が当てられることになったわけです。


●日本人の国民性と選挙制度改革史



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