「集権と分権」から考える日本の核心
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天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
歴史と社会
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
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現代流にいうと地政学的な危機感が日本を中央集権国家にしたわけだが、疫学的な危機によって、それは早い終焉を迎えた。一説によると、天平期の天然痘大流行で3割もの人口が減少したことも影響している。防人も班田収授も成り行かず、公知公民制は崩壊する。さらに国の正史である六国史の始まりと終わりが、日本の中国離れを伝えている。(全7話中第3話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:13分32秒
収録日:2025年6月14日
追加日:2025年9月1日
≪全文≫

●天平期の天然痘大流行と公地公民制


片山 実は律令体制というのは自生的に、すなわち日本の国の中でおのずと育っていったものではなかったわけです。どうしても緊急対応でそうしなくてはいけないから、日本の伝統にはないけれど、とりあえず中国の仕掛けを真似して無理無理行った。しかし、これは奈良時代のうちにすぐ崩れていってしまうわけです。

 その一つの大きなきっかけになったのは、──近年の一般的な歴史事物のありようでは、そこを強調するのはやや特殊な見解かもしれませんが、私はやはりそこを強調したほうが分かりやすいと思うのです。公地公民制が崩れる一つの大きなきっかけと多分認められるのは、天平期の天然痘の大流行でした。

 当時、戸籍というものがある程度あるから、どのくらい死んだかの統計もいろいろとあり、そこから全体に類推していく研究があるわけで、少なく見積もって大した数ではないという研究もありますが、多く見積ってこのときに国民の3割ほどが死んでしまったという研究もあります。

 それが信じられるか信じられないかはいろいろ意見の分かれるところですが、仮に最大3割、(あるいは)35パーセントほどが死んでしまったとすると、「公地公民、班田収授」と国民にいって「生きているうちはこの土地を耕して、ちゃんとこれだけの税金を納めなさい」としているところが、全て荒れ地になってしまったわけです。つまり、大勢(の人)が死んでしまったからです。

 そうすると、国家財政も崩壊してしまう。防人や租庸調をちゃんとやろうといっても、(もう無理です)。軍隊でも10パーセント~20パーセント機能しなくなったら、例えば1万人の部隊で1000~2000人が機能しなくなったら、その軍隊は全滅の域に入ってくるわけです。全滅というと、1万人が全部死んだら全滅というふうに思われる方もあるかもしれないですが、組織として機能しなくなった軍隊を全滅したといいます。

 要するに○○部隊があり、△△部隊があり、司令部から「○○部隊はここを守れ」と言われて1万人が機能する。少し減っても穴埋めをして機能するということで、その部隊は行動ができる。これが1割~2割減となると、作戦も全部立てられなくなる。軍隊の規模が違ってしまっているから、もともと期待していたことはできなくなるので、その部隊は全滅したという言い方...

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