ピアノでたどる西洋音楽史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
交響詩:「音楽+詩」で伝わる劇的なメッセージ
ピアノでたどる西洋音楽史(10)リストと交響詩
野本由紀夫(玉川大学芸術学部芸術教育学科 教授)
ピアノの魔術師として有名なリストも、ベートーヴェンを継ぐロマン派の一員だった。彼は「交響詩」という形式を発明し、メッセージのこもった音楽が国境を越えてより広く伝わることを願った。その成果はスメタナの「モルダウ」に明らかだ。(全11話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:7分20秒
収録日:2019年9月4日
追加日:2019年12月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●ピアノの魔術師リストが交響曲で行った発明とは


野本 ベートーヴェンの六番からベルリオーズという人が現れますが、ベルリオーズの友だちというのが、ベルリオーズを入れて3人いました。前回お話ししたワーグナーと、彼の2歳年上で、これまた本当に大親友関係だった人に、リストがいました。

 このシリーズの最初に……。

<ピアノ演奏>

 リストの「愛の夢」第3番を弾きました。もちろんリストの場合は「ピアノの魔術師」として世界的に有名で、史上最高のピアニストだったと言われたりもします。ピアノ音楽ではショパンと並んで重要な人ですが、実はオーケストラのほうでも発明をした人なんです。

 それが何かというと、「交響詩」です。英語では"symphonic poem"、ドイツ語ではSymphonische Dichtungといいます。どういうものかというと、ベートーヴェンが始めた、音楽にタイトルを付けたり、感情を言葉で説明するような路線を拡大していこうという流れです。だから交響的な詩であり、つまり曲を説明する詩を書いちゃうんです。タイトルだけじゃなくて、詩まで書いてしまおうということを、リストは発明したんですね。

 ベートーヴェンにとってはあくまでも交響曲が音楽の最高峰でしたが、彼の到達した交響曲をさらに発展・進化させようとしたのが交響詩なんですね。より音楽と言葉が結びつく。歌うことはなくて、あくまで音楽はオーケストラがやるんですが、目で詩などを読みながら鑑賞するという新しいスタイルを発明したんです。

―― ベートーヴェンの第九は交響曲の中に歌を入れてメッセージ性を持たせたわけですけど、さらに文芸的な要素を加味していくわけですね。

野本 そうです。ベートーヴェンの第九の場合は歌ってしまうので、結局どこかの言語で歌うことになりますけれども、交響詩では歌わない文字を書いている。だから、何語に翻訳してもよくて、意味は変わらない。メッセージは何語であってもいいよということです。


●チェコの民族独立の思いが込められた「交響詩モルダウ」


―― (第九より)もっと普遍性が高い。

野本 そうなんです。よく音楽は世界に通じる言語であり、「国境を越える」みたいに言いますが、その場合の国境というのは言葉のことですよね。「言葉の壁」というのはどうしても大きいですが、オーケストラ(楽器)の音楽だと国境を越えることができるんです。そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓