ピアノでたどる西洋音楽史
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きれいなメロディをパッと思いついてしまう天才
ピアノでたどる西洋音楽史(4)モーツァルトの天才性とは?
野本由紀夫(音楽学者/元玉川大学教授)
5歳で作曲デビュー、天才児の名をほしいままにしたモーツァルトは、音楽によって人を楽しませることを最大使命とした。オペラや交響曲に惜しみなく注ぎ込まれたメロディライン。「こんな発想はなかなかできない」というようなことを、パッと思いついてしまうのがモーツァルトだった。(全11話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:8分40秒
収録日:2019年9月4日
追加日:2019年11月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●人々を楽しませることを重要視し、ドイツ語オペラにも挑戦


――前回、モーツァルトはどちらかというと交響曲を軽く見たというか、儲けにならないためオペラやピアノ協奏曲を大事にしたというお話をうかがいました。今回は、モーツァルトの曲の特徴についてうかがわせてください。

野本 そうですね。モーツァルトは、人々を楽しませることを、一番、重要視していたのではないのかと思うんですね。オペラは、ドイツに行ってもイタリア語のまま演じたりしますから、知的レベルの高いインテリでないと難しいところもありますが、それでもモーツァルトは音楽や芝居で喜んでもらえるように音楽をつくろうとしたわけです。

 たとえば有名なオペラに『フィガロの結婚』などがあります。

<ピアノ演奏>

 これはモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』の中のアリアで、「ケルビーノのアリア」というものです。いわゆる小姓が伯爵夫人にちょっと恋心を持っちゃう。おませさんなのですね。そういう曲だったりしますが、曲だけで心の弾む感じが伝わってきてしまう、ということですね。

 オペラというのはもともとイタリアで生まれたわけですからイタリアで発達し、今でも「歌の国イタリア」と呼ばれ続けています。

――そうですね。後世になりますが、ヴェルディやプッチーニが作曲した有名なオペラがありますね。

野本 そうなんです。ロッシーニとか、いっぱいいまして、オペラはイタリア語で歌うものとして発達したんですね。ところがモーツァルトは、ドイツ語でもそれができるんじゃないかということに、果敢にも挑戦した人なんですね。

――イメージで言うと、たとえば歌舞伎は当然日本語でやっていますけど、それが韓国語なり中国語でやるのと似た発想ということですか。

野本 そうですね。モーツァルトの挑戦したドイツ語は、やたらと子音が多い。だから歌には乗りにくい発音だと思われて、オペラには使われてこなかったんです。彼は、ドイツ語の『魔笛』という歌芝居に曲をつけます。これはおとぎ話みたいなお話で、王子様がお姫様を助けにいく。そのなかでいろいろな試練があるという楽しいお話ですけれども、非常に優れた曲をつけ、大ヒットしていくわけです。


●思いついた美しいメロディをメドレー的につなぐ


野本 このように、モーツァルトは人を喜ばせることが好きだった。じゃあ、交響曲はとい...

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