「武士の誕生」の真実
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
武士の前身「兵(つわもの)」と「武士」の大きな違いとは
「武士の誕生」の真実(2)兵と武士の違い
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
武士の誕生を考える際に重要になるのが、その前身として位置づけられる「兵(つわもの)」の存在である。では、兵と武士の違いはどこにあるのか。それぞれの文化的な位置づけや、領主的側面における違いなど、両者の異なるあり方を見ていく。(全8話中第2話)
時間:13分07秒
収録日:2021年10月22日
追加日:2021年12月22日
≪全文≫

●武士の前身である「兵(つわもの)」


 「武士が中世の国家の主役になる」というのは、その通りです。武士と呼ばれる存在はどちらかといえば、少し難しいのですが「制度的な身分概念」と呼んでいいと思います。

 武士は1つの法制度の中で呼ばれる言い方で、全部の武的領有者がすべからく武士と呼ばれたわけではありません。また、武力を解決する存在である武的領有者が、武士という身分をいきなり獲得したわけでは当然なくて、やはりそれまでの長い前史があります。

 こういう流れを考える際に、前史を知る上で武士の母体となる助走に位置付けられるのが、武士の前身である「兵(つわもの)」です。武士は一般的には「もののふ」と呼ばれていて、武士の前身になる、つまり武士以前の武的領有者のことを兵(つわもの)と呼んでいます。

 兵というのは、強者と書いて「つわもの」と読むこともあります。ただし、原理的には「うつわもの」です。「うつわ」は、武器、兵器の「器」である「うつわもの」の「うつわ」です。だから兵というのは、武器や兵器を駆使するプロフェッショナルのことです。これを「うつわもの」と呼んで、その「うつわ」の言葉が転化して「つわもの」と呼ばれました。

 だから兵の兵たる所以は、戦をして、戦って、そして相手を実力によって従わせていく立場にあります。そのため、兵は別に法制度的に概念規定されているわけではなくて、あくまでも実態的な言葉に由来します。漠然と、武的な領有者で強い者、あるいは武器を駆使した者を兵と呼びました。

 この兵は、もちろん戦う戦士的な側面と領主的な側面の2つの側面を持っています。この2つの側面が完結、完成された形態こそが「武士」と呼ばれます。


●都と地方を自由に往還するのが「兵(つわもの)」の基本


 では、兵と武士は、どこがどう違うのか。いうなれば、兵は王朝国家段階に登場した武的領有者で、これの相対的な呼称が兵という言葉です。だから兵の場合には、都、地方を自由に行き来するのが特徴です。地方のことを「ひ」と言います。「鄙(ひな)にも希な」の「鄙(ひ)」です。都と地方を意味するのが「都鄙」で、都と鄙を自由に往来、往還します。こういう都鄙の往還が兵たる立場の基本でした。

 その場合、この兵たちはどういうルーツを持って登場したのかが大きな議論になります。概していうと、兵の場合には「...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
プロジェクトマネジメントの基本(6)ビジネスアナリシスの仕事
スコープ・クリープはリスクが大きい…どうすればいい?
大塚有希子
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(9)秀吉が作った公武統一政権と歴史のif
公武統一政権を作った秀吉の狙いとその歴史的意味
黒田基樹
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
人生はエネルゲイア――AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
「進化」への誤解…本当は何か?(7)進歩思想としての進化論と社会進化論
適者生存ではない…進化論とスペンサーの社会進化論は別物
長谷川眞理子