「武士の誕生」の真実
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武士の前身「兵(つわもの)」と「武士」の大きな違いとは
「武士の誕生」の真実(2)兵と武士の違い
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
武士の誕生を考える際に重要になるのが、その前身として位置づけられる「兵(つわもの)」の存在である。では、兵と武士の違いはどこにあるのか。それぞれの文化的な位置づけや、領主的側面における違いなど、両者の異なるあり方を見ていく。(全8話中第2話)
時間:13分07秒
収録日:2021年10月22日
追加日:2021年12月22日
≪全文≫

●武士の前身である「兵(つわもの)」


 「武士が中世の国家の主役になる」というのは、その通りです。武士と呼ばれる存在はどちらかといえば、少し難しいのですが「制度的な身分概念」と呼んでいいと思います。

 武士は1つの法制度の中で呼ばれる言い方で、全部の武的領有者がすべからく武士と呼ばれたわけではありません。また、武力を解決する存在である武的領有者が、武士という身分をいきなり獲得したわけでは当然なくて、やはりそれまでの長い前史があります。

 こういう流れを考える際に、前史を知る上で武士の母体となる助走に位置付けられるのが、武士の前身である「兵(つわもの)」です。武士は一般的には「もののふ」と呼ばれていて、武士の前身になる、つまり武士以前の武的領有者のことを兵(つわもの)と呼んでいます。

 兵というのは、強者と書いて「つわもの」と読むこともあります。ただし、原理的には「うつわもの」です。「うつわ」は、武器、兵器の「器」である「うつわもの」の「うつわ」です。だから兵というのは、武器や兵器を駆使するプロフェッショナルのことです。これを「うつわもの」と呼んで、その「うつわ」の言葉が転化して「つわもの」と呼ばれました。

 だから兵の兵たる所以は、戦をして、戦って、そして相手を実力によって従わせていく立場にあります。そのため、兵は別に法制度的に概念規定されているわけではなくて、あくまでも実態的な言葉に由来します。漠然と、武的な領有者で強い者、あるいは武器を駆使した者を兵と呼びました。

 この兵は、もちろん戦う戦士的な側面と領主的な側面の2つの側面を持っています。この2つの側面が完結、完成された形態こそが「武士」と呼ばれます。


●都と地方を自由に往還するのが「兵(つわもの)」の基本


 では、兵と武士は、どこがどう違うのか。いうなれば、兵は王朝国家段階に登場した武的領有者で、これの相対的な呼称が兵という言葉です。だから兵の場合には、都、地方を自由に行き来するのが特徴です。地方のことを「ひ」と言います。「鄙(ひな)にも希な」の「鄙(ひ)」です。都と地方を意味するのが「都鄙」で、都と鄙を自由に往来、往還します。こういう都鄙の往還が兵たる立場の基本でした。

 その場合、この兵たちはどういうルーツを持って登場したのかが大きな議論になります。概していうと、兵の場合には「...

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