「武士の誕生」の真実
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
奥州十二年合戦、契機は辺境軍事貴族の「ルール無視」
「武士の誕生」の真実(7)奥州藤原氏と奥州十二年合戦
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
「将門追討3人衆」の一人、藤原秀郷はその後、平泉を中心に11世紀ごろから勢力を拡大していく。その末裔にあたるのが藤原清衡の父親で、息子の清衡は「奥州藤原氏」の始祖となる。ちょうど同じ頃、俘囚の末裔で辺境勢力である安倍氏と清原氏が反乱を起こす。「奥州十二年合戦」と呼ばれるこの戦いは、これまで中央政府への反抗として捉えられていた。しかし近年は、請負という観点からその理解が見直されつつある。(全8話中第7話)
時間:12分31秒
収録日:2021年10月22日
追加日:2022年1月26日
≪全文≫

●平将門を打ち落とした藤原氏が力をつけて勢力を拡大していく


 さて、10世紀に「将門の乱」が軍事貴族を制度的に輩出していく1つの大きなポイントになったことを説明しました。「将門の乱」を追討した勢力が、そう呼んでいいか分かりませんが、いわゆる「将門追討3人衆」です。その3者とは、源経基、藤原秀郷、そして平貞盛です。この3人の末裔として、源経基の最終的な末裔が源頼朝になり、藤原秀郷の末裔が奥州藤原氏になっていき、そして平貞盛の末裔が伊勢平氏に入っていって平清盛になります。つまり、ある意味では12世紀末の内乱期は、10世紀の段階に「将門の乱」を追討した3人衆の末裔たちの争いでもあったと考えていいと思います。

 それはともかくとして、10世紀に将門を追討した連中たちは、軍事貴族の恩賞を与えられました。また、軍事貴族の恩賞を与えられた時に、多くは関東に地盤を残しつつ、それぞれの地域に勢力を拡大していきました。とりわけ、藤原秀郷は将門を射た張本だったため、将門の死命を制した大きな功績がありました。その意味では、源経基や平貞盛が五位の位階であるのに対して、五位よりランクの高い四位の位階を与えられました。そして、鎮守府の将軍になります。その秀郷の流れに属するのが奥州藤原氏です。

 この奥州藤原氏は、11世紀から12世紀の約1世紀間、実際には平泉を中心に勢力を拡大していきます。その奥州藤原氏の始祖にあたる藤原清衡という人物がいて、有名な藤原秀郷の末裔が清衡の父親になるのです。

 そういう意味で、「奥州藤原氏」のことを、最近では「平泉藤原氏」と呼ぶのが一般的になりつつあります。平泉藤原氏という言い方の背景にあるのは、奥州ほど実は全域を支配してはいなかったことがあります。「奥州藤原氏」という表現は少し過大評価で盛られているので、もう少し等身大で奥州藤原氏を考えると、やはり「平泉藤原氏」のほうが妥当ではないかという解釈があります。


●調教主義から見直される、辺境勢力と中央政府の関係


 それはともかくとして、この奥州(平泉)藤原氏は清衡を始祖とします。実はちょうど同じ11世紀中頃、1050年代にいわゆる「前九年の役」と呼ばれる「前九年合戦」がありました。それから、11世紀の1080年代に「後三年の役」がありました。

 前九年は主に太平洋側の陸奥を、後三...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
概説・縄文時代~その最新常識(2)縄文時代の開始時期に関する三つの説
縄文時代の始まりはいつから?…三つの説の特徴とは
山田康弘