「武士の誕生」の真実
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「内乱の10年」制し成立した武家政権と封建制の歴史的意味
「武士の誕生」の真実(8)武家政権の成立と封建制の意味
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
「内乱の10年」といわれる対平氏と藤原氏との10年にわたる戦いを制し、源頼朝による武家政権が成立する。その過程で「奥州合戦」に勝利し、その結果として与えられた「征夷大将軍」という名称が武家の正統なる官職として認知されていく。ここで武士の問題を考える際に重要なのは、封建制や中世の意味である。中世はお手本がない時代であり、その中で「武士の誕生」、そして封建制の意味を考えることがポイントである。(全8話中第8話)
時間:10分21秒
収録日:2021年10月22日
追加日:2022年2月2日
≪全文≫

●源氏勢力の躍進における「奥州合戦」が持つ意味


 やがて鎌倉幕府が樹立される際には、「内乱の10年」といわれて、武門が淘汰されていく中で鎌倉幕府の武家政権が成立しました。内乱の10年の前半の5年間は対平氏を攻略する5年間でした。そして、平氏の攻略が終わった後、文治5(1189)年に頼朝は「奥州合戦」を展開していきます。

 先ほどお話ししたように、将門の乱を追討した追討3人衆の子孫たちの最終ラウンドにあたる内乱の10年は、頼朝が生き抜きました。源経基の末裔たる河内源氏の頼朝が、まずは西に向かって平貞盛の末裔である清盛の平家一門を文治元(1185)年に打倒します。そして、その後に今度は北に向かって、文治5(1189)年に、奥州藤原氏を打倒します。奥州藤原氏は、清衡、基衡、秀衡という奥州三代のあとを受けて、四代目である秀衡の息子の泰衡が統治を成していました。その奥州藤原氏のルーツが藤原秀郷です。

 この流れから分かるように、ある意味では、頼朝は、まず西に向かって清盛を、やがて北、東に向かって泰衡をというように、10世紀における追討3人衆の末裔たちをこうして統合していき、武威の権力を確立していきます。

 頼朝はそういう折りに、奥州合戦に参加した武士たちに、前九年や後三年の合戦を常に引き合いに出します。そのため、頼朝のもとに参加した武士団たちにとっては、前九年なり後三年を戦った頼朝の先祖たちの系図の中に自分たちを入れ込むことが、多くの関東の武士団のアイデンティティになっていきました。

 その意味では、頼朝における政治の一環として奥州合戦がありました。ある意味、その奥州合戦は、源氏の頼朝の父祖たちが安倍氏や清原氏に起こした干渉戦争の再来で、勝つべくして勝った戦いでもありました。その結果として、武家の正統なる認知のための官職を「征夷大将軍」と呼ぶことの意味を、頼朝は改めて御家人たちの前に突きつけることによって武家の正統性を認知させます。こういう行動につながっていったということです。

 こうしたことからも、われわれは武家や武士の問題を扱う際に、封建制や中世の意味を考えなければいけません。これはとてつもなく大きい問題です。実は中世はお手本がない時代であるということ、またそうした中で日本国が武家、武士を誕生させたことの意味を考えることがポイントで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男