『太平記』に学ぶ激動期の生き方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
建武の新政と千種忠顕、文観、阿野廉子らは本当に悪か?
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(3)2つの評価が交差する「建武の新政」
兵藤裕己(学習院大学名誉教授)
元の記述に足利政権が改訂の筆を入れたために、複雑な物語となった『太平記』。具体的に、どのような人物についてどのような描き方をされているのだろうか。それを読み取ることで、さらに『太平記』の物語の特長が浮かび上がり、この書物の面白さにつながっていく。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分38秒
収録日:2020年8月26日
追加日:2020年11月15日
≪全文≫

●後醍醐天皇の「建武の新政」を大批判


 『太平記』第十二巻は「建武の新政」です。第十巻で新田義貞によって鎌倉幕府が丸焼けになり、そして第十二巻で後醍醐が京都に帰ってきて、建武の新政が開始されます。この建武の新政を倒したのは、足利です。

 建武の新政が『太平記』でどのように書かれると思いますか。当然、非常に悪く書かれています。

―― そうですね。

兵藤 元の『太平記』には、そんなものはあったはずがありません。後醍醐の鎮魂の物語ですから。

 ところが、今ある『太平記』第十二巻「建武の新政」では、まず後醍醐が大内裏建設を企てたことが批判されます。内裏とは例えば、京都御所にある紫宸殿や清涼殿などです。大内裏とは要するに、今でいうと「霞ヶ関」です。

―― 官庁街も含めた政界の場ですね。

兵藤 そうです。太政官八省全てを一か所に集めるのです。

 平安京には、大内裏はきちんとありました。ところが、その後の王朝社会では、大内裏という大げさなものは必要なくなり、内裏だけで十分だとなります。

―― 御所の場所も移ったという話がありますね。

兵藤 大内裏は、とっくの昔に滅びたのです。

 ところが、後醍醐が大内裏をつくりたいと言いだします。立派な官庁街を整備したい。要するに、後醍醐は中央集権的な政治を取り戻したいのです。

 今まで権力を握っていたのは、藤原氏や比叡山延暦寺などの僧侶、あるいは院政をしいた上皇と、さまざまでした。そのように、さまざまな属性の人物が各所で政治を握るのではなく、天皇の皇居周辺に大内裏、つまり霞ヶ関をつくり、そこで政治を行うといった中央集権的な体制をつくりたい。

 それを行おうとしたことが、かなり批判されてしまいます。「戦争が終わって、みなが疲弊しているときに、大がかりな公共事業を行うなんて!」と、まず批判される。

 また第十二巻で批判されるのは、千種忠顕という後醍醐の側近です。彼は、後醍醐と一緒に隠岐にまで行って、幕府を滅ぼす戦争のときには山陰道から攻め上ってくる天皇軍の大将になりました。その人物の建武政権下での振る舞いがかなり批判されます。驕り高ぶって、遊んでばかりいる、といったように。

 もう1人、後醍醐天皇と楠木正成とを結びつけたと思われる文観という僧がいます。その文観については「外...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
樋口隆一
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(7)日本の倫理こそ未来の理想
他人の幸福実現に喜びを見出す日本の道徳こそ未来の理想だ
賴住光子
「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像
こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は
杉山晋輔
『貞観政要』を読む(2)著作に登場する人物たち
房玄齢・杜如晦・魏徴・王珪―太宗の四人の優れた側近
田口佳史
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
インフレの行方…歴史から将来を予測する(6)高市政権誕生の影響
ポイントは財政悪化よりインフレ?…高市政権でどうなるか
養田功一郎
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
新撰組と幕末日本の「真実」(1)近藤勇…教養人の素顔と日野宿本陣
近藤勇と日野宿本陣…多摩の豪農たちの財力と教養力の凄さ
堀口茉純