『太平記』に学ぶ激動期の生き方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
後醍醐天皇の鎮魂物語だった『太平記』改訂の秘密
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(2)『太平記』の複雑な成立過程
兵藤裕己(学習院大学名誉教授)
人物の評価が一面的である『平家物語』に比べ、登場する人物のさまざまな側面を描き出している『太平記』。そのような特徴を持つに至った大きな原因は、その複雑な成立過程にあった――。いかにして『太平記』は出来上がっていったのか、その真相に迫る。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分03秒
収録日:2020年8月26日
追加日:2020年11月8日
≪全文≫

●『太平記』前半は、後醍醐天皇の一代記である


―― 前回、成立過程という話がありました。そこから考えると、これはそれこそ学校で習った範囲での話ですが、『平家物語』は序文にあるように「諸行無常」の色合いが表れている一方、『太平記』はまた違っている。『太平記』の成立過程とはどのようなものだったのでしょうか。

兵藤 『太平記』は、まず序文があり、その次の第一巻は1318(文保2)年の後醍醐天皇即位から始まります。そして、後醍醐天皇の倒幕計画に参加するような形で、第三巻では楠木正成が出てくる。それから第十巻では鎌倉幕府が滅び、第十二巻で後醍醐天皇による建武の新政が始まります。

 後醍醐天皇は建武の新政を開始するのですが、この『太平記』の構成を見れば分かるように、第十四巻で足利尊氏が建武政権から離れていく。要するに、反旗を翻すわけです。
そして、その尊氏と戦い、楠木正成は湊川で戦死。その後、足利尊氏軍と戦った新田義貞が第二十巻で、北陸の福井市において死んでしまいます。

 後醍醐天皇は結局、京都を追われてしまう。後醍醐が京都を脱出するのは、第十八巻です。京都を脱出して3年ほど、現在の奈良県・吉野に仮の御所を造り、そこに留まります。これが南朝です。

 もちろん後醍醐は、京都に帰りたくて仕方がありません。ですが結局、帰ることができずに死んでしまいます。

 後醍醐のような非常に英邁な君主で、ずば抜けた才能の持ち主が、このように残念な思いを残して死んだのは、当時の人たちにとっては怖いことでした。

―― 怨霊的なものでしょうか。

兵藤 後醍醐のような偉い人の場合は「御霊(ごりょう)」と言います。もっと昔でいうと、菅原道真が御霊になったようなことですね。

 ですから、『太平記』は段階的に成立しています。後醍醐の即位と第二十一巻の崩御までがひとまとまりで、後醍醐天皇の一代記となっています。これを編集する意図・意義は、後醍醐の鎮魂だったと思います。


●足利直義によって『太平記』は厳禁に


兵藤 この『太平記』を作った人物は、『難太平記』という文献が残っており、はっきりわかっています。当時、法勝寺(ほっしょうじ)という京都で最大のお寺が、今でいうと平安神宮のあたりにありました。今も岡崎法勝寺町という地名が残っています。

 その法勝...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋

人気の講義ランキングTOP10
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(2)大規模言語モデルが孕む問題
AIは頭のないオウム?…AIがAIを引用する世界に創造性はあるか?
橋爪大三郎
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(6)賃金の未来シナリオ
AIが人間の仕事を「完全代替」したらどうなる?…仕事と賃金の未来
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
ウェルビーイングを高めるDE&I(5)心理的安全性の高い組織づくり
無知、無能、邪魔!?…心理的安全性を阻害する5つの要因
青島未佳
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
AI時代と人間の再定義(6)道徳の起源から考えるAIと感情の問題
道徳の起源は理性か感情か?…AI時代に必要な思考の身体性
中島隆博
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
編集部ラジオ2026(17)「過剰な良かれ」の落とし穴
【10minで考える】巨人・阿部監督の辞任と「過剰な良かれ」
テンミニッツ・アカデミー編集部
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏