『太平記』に学ぶ激動期の生き方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
在野草莽の楠木正成と後醍醐天皇の関係が導く倒幕の論理
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(4)『孟子』の思想が与えた影響
兵藤裕己(学習院大学名誉教授)
後醍醐天皇の鎮魂の物語と源平交代史が折り重なった『太平記』。さらには、物語に組み込まれた『孟子』の思想が、この書を濃密に色づけていくことになる。江戸時代、はては幕末から明治にかけても大きく影響することになった『孟子』の思想とは、どういったものだったのか。(全6話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分19秒
収録日:2020年8月26日
追加日:2020年11月22日
≪全文≫

●『孟子』の思想に強い影響を受ける『太平記』


―― 今のお話からすると、足利氏がなぜ将軍になったのかというエクスキューズのためでしょう、序文からしても『平家物語』は無常観が説かれますが、『太平記』は儒教的というか、孟子の革命思想「悪いものは天によって払われる」に近いものがあるということですね。

兵藤 そうですね。『平家物語』序文「祇園精舎の鐘の声……」では、異朝と本朝の先例が挙げられています。

「遠く異朝をとぶらへば、秦の趙高、漢の王莽、梁の朱忌、唐の祿山」。そして、「近く本朝をうかがふに、承平の將門、天慶の純友、康和の義親、平治の信賴」。これらの8人の先例は全て、朝廷に反逆して滅んだ悪臣です。

―― そうですね。

兵藤 ところが『太平記』の場合は、「もしその(帝王としての)徳欠くるときは、位ありといえども持たず。いわゆる、(中国の最古の王朝)夏の桀(王)は、南巣に走り(南巣の戦いに敗れて逃げ)、殷の(王朝最後の暴君である)紂(王)は、牧野に敗る(牧野の戦いで州の国に敗れて殺された)。」

「その道(臣下としての道)違うときは、威ありと雖も久しく保たず(威力があってもその威力を久しく維持することはできない)。かつて聞く。趙高(秦の始皇帝に仕えて、始皇帝の王子を殺害し、やりたい放題を行った極悪人)は咸陽に死し、禄山(唐の玄宗皇帝に反逆した安禄山のこと)は鳳翔に亡ぶ(滅亡した)と。」

 これは要するに、後半は悪臣が滅んだ例だけれども、前半は悪王が滅んだ例です。ですが、日本は万世一系を謳っているので、悪王が滅んだ例を挙げるのはおかしいのです。

―― 確かに。あまりこういう例は見ませんね。

兵藤 これは、『孟子』の思想がこの時代に流行してしまって、(『太平記』に)入ってきているのです。


●「貴戚の卿」として足利尊氏に担がれた光明天皇


兵藤 『孟子』の一節に、国王に大過(大きな過ち)があって、臣下がたびたび諫めても聞かないようであれば、「貴戚の卿」、つまり同姓の王族に「位を易ふ」とあります。これは『孟子』の「貴戚の卿」という有名な思想です。

 (足利)尊氏は、まさか自分が天皇になろうなどとは思っていません。自分が政治をやっていくうえで都合のいい天皇を持ってこられればい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋

人気の講義ランキングTOP10
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
徳と仏教の人生論(4)克己と天壌無窮
横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(5)社会的共通資本によるプラチナ社会へ
「日本に来れば未来が見える」…希望があるうちにやろう!
小宮山宏
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
宇宙に関するニュースを理解するために宇宙の姿を学ぶ
岡村定矩