江戸とローマ~諷刺詩と川柳・狂歌
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
江戸時代の粋が生んだ「川柳」を詠んで俳諧の歴史を楽しむ
江戸とローマ~諷刺詩と川柳・狂歌(2)江戸っ子と川柳
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
川柳や落語では「江戸っ子の粋」が強調されるが、ローマにはそれに匹敵する「ローマっ子」がいたのだろうか。どちらの都市も外部から多様な人が流入したが、「それ以外の人間」により純粋な都会人の定義が行われたのは江戸だけだった。今回は、そんな江戸の粋が生んだ川柳の事例をひも解いていく。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分39秒
収録日:2021年6月16日
追加日:2022年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●「江戸っ子」に匹敵する「ローマっ子」はいたのか


―― 日本の場合、川柳や狂歌、また歌舞伎においても江戸っ子的な「粋」といわれるように、どちらかというとエスプリが利いたイメージがあると思います。ローマの風刺詩のイメージは、どういう精神に裏付けられているといえるのでしょうか。

本村 「江戸っ子」に類するような言葉がローマの場合にあるかというと、「ローマっ子」のようなものがあったわけではありません。一方、「江戸っ子」の定義については西山松之助(日本史学者)さんなどが述べています。

 それによると、当時は参勤交代でいろいろな国から多数の武士、武家がやって来て、それぞれに屋敷をつくっていました。そういう人たちや彼らに付随して来る人たちなど、「江戸以外の人間」がたくさん集まってくることになったわけです。

 そうなると、逆にどこに「江戸的な人間」の特徴があるのかが気になるところです。そこで、日本橋や神田などで生まれ育ったということから、非常に粋な精神を持っているというところまでクローズアップされていきます。田舎から来た侍、いわゆる田舎侍の集団との対比によって「江戸っ子的な精神」が形成されてきたのではないか。西山松之助さんの著書を読んで、非常に納得したところです。

 それと同じようなことがローマではあったのかといわれると、参勤交代はなかったけれども、外からたくさんの人が集まってきていた点は共通します。ただ、本当に純粋なローマとはどういうものかというような精神が出てくるのは、もっと後の時代になります。キリスト教が出てきて、古典古代的な文化が失われていく時代になってからのことです。


●長い平和に育まれた川柳と諷刺詩


本村 当時のローマはむしろ多様なものを属州から取り込んでいくところがあり、「ローマっ子」のような概念は出てこなかった気がします。その点、江戸と大きな違いがあるというか、むしろ江戸のほうが非常に特殊だったといえそうです。

―― 類型ができた、ということですね。

本村 参勤交代があったために、世界史的に非常に特殊な都市だったということだと思いますね。

―― 全国から強制的に人を集めてくるような仕組みですからね。

本村 そうですね。それをさておいたとしても、江戸時代の二百数十年間、特に江戸の地域においては、徳川幕府の下で平和な時代が続きました。私は、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理