江戸とローマ~哲人と俳人
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
松尾芭蕉と与謝蕪村――江戸の俳人が表現した粋な遊び心
江戸とローマ~哲人と俳人(2)蕪村と芭蕉の風流
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
自然を題材にすることの非常に多い日本の詩歌だが、そこに「風流」を表現した江戸の俳人の中から与謝蕪村と松尾芭蕉の句を取り上げる。季節の風物を詠んでもどこかおかしさだったり、王朝の歌や絵の影響を匂わせる蕪村。自由気ままに旅を楽しみながら、昔の「仕官懸命」な境地を振り返った芭蕉。俳句の巨匠たちは風流の中にも滑稽や洒脱を加味することで江戸の精神を表現した。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分25秒
収録日:2021年9月16日
追加日:2023年9月28日
≪全文≫

●蕪村の句に見る自然と粋


本村 江戸の場合は、風流プラス滑稽だったり洒脱だったりします。庶民レベルでもいろいろなものがあったと思いますが、今回はせっかくですから江戸期の俳人として有名な蕪村と芭蕉の例を取り上げてみたいと思います。

 (彼らは)いろいろな素材を題材にして俳句に詠んでいるわけです。それらは自然の中のものですから、自然の動植物を取り上げることがもちろんあります。例えば夏、蛍が出てきたときの句。

 「蚊屋の内にほたる放してアゝ楽や」(蕪村)

 「楽」というのは楽しいという意味ではないかと思いますが、蚊帳の中だから、蛍が出ていかない。そんなところへ蛍を持ってきて楽しみ、遊んでいるという感じです。そんな蛍を題材に蕪村が詠んでいます。

 花瓶を題材にして詠んでいる句もあります。

 「金屏のかくやくとして牡丹かな」(蕪村)

 牡丹の花を花瓶の中に入れ、それを大きな金屏風の前に置いて楽しんでいる、というような解釈がされています。その花瓶一つとっても、そこに牡丹があって、背景に金屏風がある。そんな景色を、どこかちょっとおかしげにやっている。

 金魚鉢なども題材にしています。

 「硝子(びいどろ)の魚おどろきぬけさの秋」(蕪村)

 ここの「魚」は金魚のことでしょうけれども、それが秋の気配の近づいてくることを感じさせる。これは実は古今集にある藤原某の和歌、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」を題材に、それを少し縮めて「硝子の魚おどろきぬけさの秋」という、秋の気配を風の音からもうかがい知ろうとするようなところがあります。

 また、江戸にはいろいろな絵画(の流派)がありましたが、ある南画の影響で詠んだものもあります。

 「かなしさや釣の糸吹あきの風」(蕪村)

 釣り竿の糸のちょっとした動きに感じ取る秋の風から、そのもの悲しさを詠んだものです。


●本末転倒に生きる懸命さを皮肉った銭亀の句


本村 さらに皮肉ったような句もあります。

 「銭亀や青砥もしらぬ山清水」(蕪村)

 この銭亀については、文学者の説明を参考にしてみましょう。「山清水」というのは(水の綺麗な)土地を示す名前で、田舎ののんびりしたところです。そこに「銭亀」が住んでいる。一方の「青砥」というのは、鎌倉時代の武士の青砥藤綱からきています。

 青砥藤...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
【入門】日本仏教の名僧・名著~明恵編(1)批判精神と『夢記』
法然の専修念仏を批判…明恵の「あるべきようは」とは?
賴住光子
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(5)AIを最も活用できるのは誰か
実はベテラン層こそAIを存分に活用できる…AI導入の生産性分析
宮本弘曉
編集部ラジオ2026(16)宮本弘曉先生:AI大格差
【10min解説】宮本弘曉先生「AI大格差」仕事と給料の未来
テンミニッツ・アカデミー編集部
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
ビジョン講座「直観と論理をつなぐ思考法」(1)「ビジョンドリブン」と創造性
妄想から始まる「ビジョンドリブン」で創造的な社会をつくる
佐宗邦威
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(6)子どものための睡眠
「眠育」のすすめ~睡眠不足は子どもの脳の発達にも悪影響
西野精治
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(4)「国のかたち」を守った男たち
全責任をかぶることを恐れず本義を貫く…樋口季一郎の決断と行動
門田隆将
ウェルビーイングを高めるDE&I(3)人的資本経営の核となるDE&I:前編
DE&Iとは何か?よくある誤解からポイントを理解する
青島未佳
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明