渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』
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答えは全て『論語』にある、座右の書を得た渋沢栄一の卓越
渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』(9)『論語』を読む<3>
田口佳史(東洋思想研究家)
人生100年時代、孔子が残した「六十にして耳順ふ」以下の章句をかみしめることは重要だろう。渋沢栄一の晩年を見れば、彼はその言葉通りに年を重ねていったことが分かる。「学びて時に之を習ふ」を実践し続けた彼が起業において大切にした4つのチェックポイントは、今でも役に立つ現代へのプレゼントではないだろうか。(全9話中第9話)
時間:13分18秒
収録日:2020年3月3日
追加日:2021年9月12日
≪全文≫

●「六十にして耳順ふ」は愉快な人生プラン


 最終回の今回は、皆さんもよくご存じの言葉から始めましょう。

「子曰く、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順ふ。七十にして心の欲する所に従へども、矩(のり)を踰(こ)えず」

 渋沢もこの章句を再三再四、いろいろなところで引用している。ということは、やはり自分の生きるプランとして、この孔子の生き方を模範としたのだなあ、ということが分かります。

 私も50年間ぐらい、この生き方をずっと読んできて、こういうふうになっているとは言いませんが、こういう生き方というものはあるものだと考えながら、この文章をずっと読んでまいりました。また、「人生論を語る」ような機会があれば、必ずこの章句を持ち出して、解説をしています。

 そんな私が最近、非常に感じるのは、実にうまくできた人生計画だということです。何がうまくできているかというと、年を取れば取るほど愉快になるようにできていることです。「六十にして耳順ふ」というのは、自分にとっていやなこと、「もう分かっているよ」ということを言われたり、自分の欠点をズバズバ言われたりするときにでも、耳が逆らわない。「うん、そうだよな。うん、そういうところが自分はあるんだよ。いや、ありがとう、ありがとう」と言えるぐらいの心の広さを持てということです。もっと言えば、自責というものを長年持ち続けていたかどうかが問われるのが、60歳だと言っているわけです。

 70歳になると、もっと幅広くなります。「心の欲する所」、つまり「今日はこうやって暮らそう」とか「こういうところへ行ってこういうふうにしよう」というプランですね。私も70代ですが、今どきの70歳ぐらいだと、この通りにするとすぐ警察のご厄介になってしまったりする例が多く見られます。

 しかし、「心の欲する所に従へども、矩を踰えず」です。「矩」は、今でいう法律であり、世の常識です。70歳になると、規範がもうしっかり入っているから、何かというと問題を起こすようなことはなく、規範の内で心広々と生きるような者になっている。名人の生き方といってもいいです。

 そういう境地になってくれということで、渋沢の晩年を見ていても、この言葉通りになっているのではないかと思うところです...

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