渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
答えは全て『論語』にある、座右の書を得た渋沢栄一の卓越
渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』(9)『論語』を読む<3>
田口佳史(東洋思想研究家)
人生100年時代、孔子が残した「六十にして耳順ふ」以下の章句をかみしめることは重要だろう。渋沢栄一の晩年を見れば、彼はその言葉通りに年を重ねていったことが分かる。「学びて時に之を習ふ」を実践し続けた彼が起業において大切にした4つのチェックポイントは、今でも役に立つ現代へのプレゼントではないだろうか。(全9話中第9話)
時間:13分18秒
収録日:2020年3月3日
追加日:2021年9月12日
≪全文≫

●「六十にして耳順ふ」は愉快な人生プラン


 最終回の今回は、皆さんもよくご存じの言葉から始めましょう。

「子曰く、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順ふ。七十にして心の欲する所に従へども、矩(のり)を踰(こ)えず」

 渋沢もこの章句を再三再四、いろいろなところで引用している。ということは、やはり自分の生きるプランとして、この孔子の生き方を模範としたのだなあ、ということが分かります。

 私も50年間ぐらい、この生き方をずっと読んできて、こういうふうになっているとは言いませんが、こういう生き方というものはあるものだと考えながら、この文章をずっと読んでまいりました。また、「人生論を語る」ような機会があれば、必ずこの章句を持ち出して、解説をしています。

 そんな私が最近、非常に感じるのは、実にうまくできた人生計画だということです。何がうまくできているかというと、年を取れば取るほど愉快になるようにできていることです。「六十にして耳順ふ」というのは、自分にとっていやなこと、「もう分かっているよ」ということを言われたり、自分の欠点をズバズバ言われたりするときにでも、耳が逆らわない。「うん、そうだよな。うん、そういうところが自分はあるんだよ。いや、ありがとう、ありがとう」と言えるぐらいの心の広さを持てということです。もっと言えば、自責というものを長年持ち続けていたかどうかが問われるのが、60歳だと言っているわけです。

 70歳になると、もっと幅広くなります。「心の欲する所」、つまり「今日はこうやって暮らそう」とか「こういうところへ行ってこういうふうにしよう」というプランですね。私も70代ですが、今どきの70歳ぐらいだと、この通りにするとすぐ警察のご厄介になってしまったりする例が多く見られます。

 しかし、「心の欲する所に従へども、矩を踰えず」です。「矩」は、今でいう法律であり、世の常識です。70歳になると、規範がもうしっかり入っているから、何かというと問題を起こすようなことはなく、規範の内で心広々と生きるような者になっている。名人の生き方といってもいいです。

 そういう境地になってくれということで、渋沢の晩年を見ていても、この言葉通りになっているのではないかと思うところです...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治