渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
渋沢栄一が師・尾高藍香から学んだ『論語』の教養
渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』(4)『論語』との仲立ち
田口佳史(東洋思想研究家)
江戸の武士にとって『論語』は教養の核だったが、渋沢栄一のような農家出身の若者が親しくそれに接し、生涯の座右の書とするまでに愛したのはどういうわけだろう。彼と『論語』を仲立ちしたものとして、自由な時間と身分、優れた師、よく似た時代背景の三つが挙げられる。(全9話中第4話)
時間:13分13秒
収録日:2020年3月3日
追加日:2021年8月8日
≪全文≫

●『論語』を学ぶ時間に恵まれた江戸の豪農たち


 渋沢栄一といえば『論語』というぐらいで、3、4歳の頃から渋沢は『論語』を学んでいました。前半から申し上げてきたように、武家の教養として『論語』は核をなすものでした。幕末に近づくにつれ、武家が政治を司っていくことの困難さが際立っていき、教養の必需性も浮かんできました。『論語』に代表される「四書五経」、また儒家の思想というものは、その基本にあったわけです。

 渋沢のような農民が、どうして『論語』に長けていたのかというのは、前半でふれたように、豪農という立場に自由時間があり、学ぶ時間がたっぷりあったこと。もう一つは、武士のように身分制度にがんじがらめになって、そこからなかなか這い出ることができない立場ではなく、当時は農民のほうが自由奔放に生きられたのではないかというところが考えられます。だから、あちらやこちらへ学びに行くことができたのでしょう。

 渋沢と同年代の新選組なども、主要な幹部は農民出身でした。農民出身でいながら武士よりも腕が立ったのは、それだけ剣術修行に明け暮れる時間があったということでしょう。彼らも藍の本場や絹作りのお蚕の本場のようなところに生まれた人ばかりでした。幕末の頃になると、農民のあるパーセンテージを占める豪農の人たちこそが「自由人」として時間を自由に使い、一番チャンスがあったといっていいと思います。

 (話はそれましたが、)まず渋沢が儒家の思想に非常に長けていたことが重要です。


●『貞観政要』を愛読した論語の師、尾高藍香


 渋沢と『論語』についてお話しするときに忘れてはならない人物が一人います。彼は4、5歳までは父親に手ほどきを受けていましたが、その後元服する15、6歳までの間は親戚の尾高惇忠(あつただ)という人のところへ漢籍を学びに行っています。親戚のおじさん(編注:実際の関係は従兄弟)のところへ通っていたわけです。

 さらに、この尾高惇忠の妹と彼は19歳で結婚するわけですから、義理の兄にもなるという関係の人です。この尾高惇忠、通常、「尾高藍香(らんこう)」と呼びますが、藍の香りと書くように、まさにこのあたりの地域を代表する教養人でした。尾高惇忠(藍香)師の教養がどの程度であったかは、渋沢がいろいろなところにエピソードを残し、卓越した博学ぶりについて具体的に書いています。

 尾高藍香...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ムハンマドを知る(1)その役割と人物像
ムハンマドは神の啓示を受けた預言者で共同体の最高指導者
山内昌之
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二
プラトンの哲学を読む(1)対話篇という形式の哲学
ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ
納富信留
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
世界の語り方、日本の語り方(1)なぜ「語り方」なのか
今後身に付けるべき知性として「新しい語り方」を考える
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
飽食時代の「選食」のススメ(1)選食の提唱と「食の多様性」
肥満、認知症、低栄養…飽食の時代に大事な「選食力」3カ条
堀江重郎
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(8)AI時代の人間の価値
労働市場改革を妨げる労組や、不登校を救えぬ文科省こそが邪魔だ
宮本弘曉
ウェルビーイングを高めるDE&I(6)エクイティ実現と特権性の理解:前編
改札、公衆トイレ、在宅勤務…構造的格差とエクイティの意味
青島未佳
編集部ラジオ2026(17)「過剰な良かれ」の落とし穴
【10minで考える】巨人・阿部監督の辞任と「過剰な良かれ」
テンミニッツ・アカデミー編集部
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(2)失敗の本質
『失敗の本質』初版から30年…同じ失敗を繰り返す日本組織
三谷宏治
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
睡眠不足が生活習慣病や精神疾患を招く…睡眠の5つのミッション
西野精治
不便益システムデザインの魅力と可能性(1)「便利・不便」「益・害」の関係
「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心
川上浩司
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫