渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
『論語と算盤』で渋沢栄一が多用した「忠恕」の心とは
渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』(7)『論語』を読む<1>
田口佳史(東洋思想研究家)
渋沢栄一の著書『論語と算盤』には、彼が大切にした『論語』の言葉が多く引用されている。中でも多用されているのは「忠恕」という言葉だ。これはどういう意味なのか。一方、渋沢は『論語』を読む人の中ではあまり重視されない部分にも触れている。そこで彼が学んだのは「一つ一つを丁寧に」という生き方だった。(全9話中第7話)
時間:13分11秒
収録日:2020年3月3日
追加日:2021年8月29日
≪全文≫

●孔子が「吾が道」とした「忠恕」とは何か


 そこで今回は、『論語』の章句に入りたいと思います。

 渋沢栄一が『論語と算盤』に数多く挙げている『論語』の言葉の中で、一番多いのは「忠恕(ちゅうじょ)」という言葉です。「忠恕」とはどういうものかを知るため、まず最初に出ている文章を読みましょう。

「子曰く、参(しん)や、吾が道は一(いつ)以て之を貫く。曾子(そうし)曰く、唯(ゐ)と。子出づ。門人(もんじん)問ひて曰く、何の謂(いひ)ぞやと。曾子曰く、夫子(ふうし)の道は忠恕(ちゅうじょ)のみと」

 曾参(曾子)に対して、孔子があるとき、こう言った、と始まります。「吾が道」(自分が一番大切に思い、これこそが道の非常に重要なところではないかと思う筋道、道理、道義など)は、「一以て之を貫く」(一つのことで貫かれているのだ)と。それに対し、孔子に長年付き従ってきた高弟の曾子は「そうですね」と言います。さて、先生(孔子)が出て行ったのを見た門人は、先の謎かけのような対話の理由を聞こうと、「今、何をおっしゃったのですか」と訊きます。先ほどの謎の問答で言われた「一つ」とは何なのかを聞いているのです。それに対し、「先生の道は忠恕のみだ」と答えたという話です。

 「忠恕」とはいったいどういうものかということをお話ししなければいけませんが、これはもう渋沢そのものであると言ってもいいでしょう。まず何かというと、彼は常に相手の立場に立って考えることを当たり前にやってのける。思考回路がそのようにできている。「思いやり」のようなことをあえて言わなくても、相対したときに、相手が訴えかけようとしていることが分かる。そして、その人の立場になって、訴えかけを聞いてやろうとします。もっといえば、何か手伝おうという場合も、相手の立場を考える。要するに、相手が望まないこと、いやだということは決してやらない。「忠恕」の中には、そういう意味も含まれます。

 前回「仁」を、多くの人と関わり合って生きていかなければならない世の法則であると申しました。その心構えとして大切なのが「忠恕」ということです。


●渋沢が慕われたのは「忠恕」の心に満ちていたから


 「忠」は何かというと「中の心」で、「偏りのない心」です。偏りのない心とはどういうものでしょう。簡単にいえば「い...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
『タテ社会の人間関係』と文明論(1)誤解を招いた「タテ社会」の定義
誤解された『タテ社会の人間関係』…日本社会の本質に迫る
與那覇潤
徳川家康と貞観政要(1)徳川家康が太宗から学んだ治世の要諦
『貞観政要』とはいかなる書か?家康は何を学んだのか?
田口佳史
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(2)教義の宗教と覚りの宗教
キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
橋爪大三郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
デカルトの存在論に学ぶ(1) 「我思う、ゆえに我在り」
「我思う、ゆえに我在り」はデカルトの専売特許ではない
津崎良典
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(6)不在因果の問題
不作為(◯◯しなかったこと)の原因は無限に拡散する
一ノ瀬正樹
資本主義の再定義…哲学で考える(6)「学ぶ」ことの本質と道徳の問題
「一人で悟るのは危険だ」…学ぶことの本質と日本の役割とは?
中島隆博
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉