渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
渋沢栄一はなぜ「近代化の牽引者」になろうとしたのか
渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』(3)身分制度への懐疑と海外での体験
田口佳史(東洋思想研究家)
農家に生まれた渋沢栄一はやがて一橋家に仕える身となり、明治政府を経て商工の中心へ。彼の人生は「士農工商」全てを体験したものだった。そんな彼が「近代化の牽引者」になろうとした理由の一つに、身分制度への深い懐疑がある。その源泉は成長過程のどこにあったのだろうか。また、海外体験で出会ったものとは。(全9話中第3話)
時間:12分38秒
収録日:2020年3月3日
追加日:2021年8月1日
≪全文≫

●豪農出身の渋沢栄一には本を読む時間があった


 今回は、渋沢の人生に戻ります。渋沢が17歳になった時、彼にとっての転機だったのではないかと私が考えることが起こります。代官から呼ばれて、金の提供をせよ、と申しつかったことです。

 それまでは、父親が代官との付き合いを行っていましたが、「もう17歳にもなったことだから、代わって代官所へいってくれないか」とでも頼まれたのでしょう。栄一が代官所へ「何でありましょうか」と顔を出すと、殿様の娘が今度結婚して輿入れすることになった、ついては諸費用がかさむため、みんなにそれを分担してもらおうと思っている、と言われるわけです。

 渋沢は、第1回で申し上げたように貧農ではなく、どちらかというと豪農でした。豪農の人には何が与えられるかというと自由時間で、暇な時間があるわけです。貧農は、とにかく朝から晩まで働いて暮らします。農家というと「時間がない=いつも働いている=勉強の時間がない」ということで、「本を読む時間がない=教養がない」ところまでつながりがちなのが、江戸の農民観でした。

 しかし渋沢に限っては(というよりも私はかなりの数のそういう農民がいたと思うのですが)、裕福であったため、朝から晩まで働く必要はなかったのです。肉体労働をしなくてもよくなるとどうなるのかというと、人間の特性としてやはり学ぼうということになります。


●代官所に楯突いた17歳の渋沢


 渋沢も3、4歳の幼い頃から親について『論語』を学ぶなどを続けていました。ですから、17歳にもなると四書五経を全て学び終えた一廉の教養人になっています。したがって、世の中のことが相当よく分かっていて、代官所で次のような感慨を得ました。

 なぜわれわれが苦労して働いたものを、いつもいつも税金として要求されると、それにしたがってハハァと言って差し出すのか。百歩譲って出すのはいいとしても、出させるほうが権力として威張っていて、出すほうが卑屈になっているのはどうもおかしいのではないか。

 そのように思っていたところ、代官所では割り当ての話が進み、某家はいくら、某家はいくら出してもらう、という話になっていた。普段の思いが爆発してしまったのでしょう。彼は即答を避け、「今日は代理で来ておりますから、家に帰って親父と諮って返答したい」と答えます。

 代官は激怒して、「何を言っているのだ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
デカルトの存在論に学ぶ(1) 「我思う、ゆえに我在り」
「我思う、ゆえに我在り」はデカルトの専売特許ではない
津崎良典
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
現代の小児科学と最高の子育て(1)現代の小児科学の役割
困難の克服と幸せな人生の獲得、それが小児科学の目的
高橋孝雄
人生に活かす東洋思想(1)人生の成功とは何か
東洋思想の「徳」や「道」をわかりやすくいうと?
田口佳史
『孫子』を読む :計篇(1)「戦わずして勝つ」の意味
「戦わずして勝つ」ことを唱える『孫子』が注目される理由
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(38)アメリカ中間選挙と民主主義
【10min解説】第2期のトランプ大統領と中間選挙を考える
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(3)ヴァイキング招致説とキエフ・ルーシ
ロシアの起源はヴァイキング?…キエフ・ルーシの興亡と、ロシアとウクライナの決定的な「歴史的溝」
上月豊久
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
宗教で読み解く「世界の文明」(3)一神教とイスラム教
イスラム教には民主主義や憲法といった考え方がない
橋爪大三郎