渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
孔子が最も嫌う「巧言令色」から渋沢栄一が学んだこと
渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』(8)『論語』を読む<2>
田口佳史(東洋思想研究家)
渋沢栄一が孔子に学んだことは多い。例えば、音楽を聴く喜びは素晴らしいが、それにうつつを抜かさないようにとする「關雎は楽みて而も淫せず」。あるいは思ってもいないことを言葉にする口先だけの人間が社会秩序の最大の敵だとする「巧言令色、鮮いかな仁」。渋沢が尊重し事あるごとにかみしめた言葉をたどっていこう。(全9話中第8話)
時間:11分54秒
収録日:2020年3月3日
追加日:2021年9月5日
≪全文≫

●楽しさに「うつつを抜かさない」という孔子の教え


 渋沢が尊重している文章の紹介を続けます。

「子曰く、關雎(かんしょ)は楽みて而も淫せず。哀みて而も傷(やぶ)らず」

 通常、『論語』の代表的な文章を挙げろといって、こういうところが挙がることはまずない文章です。これも、渋沢は非常に尊重して挙げています。

 「關雎」は『詩経』という経書からのものです。五経には『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』がありますが、このうちの『詩経』をバッと開くと一番最初に出てくるのが「關雎」の詩なのです。

「關關(かんかん)たる雎鳩(しょきゅう)は、河の洲に在り。窈窕(ようちょう)たる淑女は、君子の好き逑(つれあ)ひなり」

 という文章で、これは歌うかのように、「かんかんたるしょきゅうはかわのなかすにあり~」と詠まれるものでした。心が非常に晴れやかになり、浮き立つような音楽が「關雎」の詩だといえるでしょう。

 孔子は「關雎」の音楽を非常に楽しいものだと認めていますが、「淫せず」と言っています。心を奪われ、それにうつつを抜かさないという意味です。孔子にも喜怒哀楽は強くありましたが、それにうつつを抜かさない。心を奪われないことが重要なのだということで、渋沢はこの章句を上げているわけです。


●感情に負けず喜怒哀楽をコントロールする


 人間である以上、喜怒哀楽はもちろんありますが、それに飲み込まれることがない、ということです。これは、四書の中の『中庸』巻頭にも、全く同じことが書いてあります。そこでは、「喜怒哀楽をいまだ発する前の状態が中庸の心だ」と言われます。したがって、感情的にならずに、自己コントロールが効く人間になるべきだということです。

 私自身にも経験がありますし、失敗した人間を何人も見ていますが、「言わなければよかったのに」という一言を、腹立ちまぎれ、怒りにかまけて言ってしまい、一生を台無しにするということは、よくあることです。

 孔子は、そういう失敗をずっと見てきたのでしょう。したがって、自分は喜怒哀楽ごときに負けてなるものかと思った。渋沢栄一もまったく同じで、喜怒哀楽に負けない。喜んだり怒ったりはしますが、すぐに切り上げるということです。

 これも、渋沢が自分を鍛錬するのに非常に学んだところではないか、という...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(1)国守・大伴家持と地方社会の日常
『万葉集』でわかる奈良時代の貴族と地方豪族の関係と日常…歌人・大伴家持の歌に秘められた国守時代の苦労話
上野誠
編集部ラジオ2026(36)宮脇淳子先生「満洲史」講義の要点
【10min解説】「満洲史」はタブー?…そこから見えてくる教訓とは?
テンミニッツ・アカデミー編集部
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨