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なぜわれわれは生涯をかけて学ぶ必要があるのか

現代人に必要な「教養」とは?(5)生涯をかけて学ぶことの意味

情報・テキスト
世界に比べても変化のスピードが圧倒的に遅いと言われて久しい日本。スタートはアメリカだとしても、そこから出た新しい技術やモノを導入するスピードが遅すぎるのだ。ではどうすればいいか。それは、われわれが「生涯をかけて学ぶことの意味」ともつながる話である。(全8話中第5話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:32
収録日:2022/06/29
追加日:2022/10/28
キーワード:
≪全文≫

●日本は変わる速度が遅すぎる


―― 前回の話だと、たぶんこれからは「実現する」という方向にベット(bet=賭ける)したほうが教養としては正しい。しかし、それをつぶす理論ももちろん組めるので、例えばSNSなどではそういう議論が出てしまうことになる。ここはなかなか難しいところですね。

小宮山 日本以外は実現するところが多いのです。スタートはアメリカであり、今新しいことが起こっているのはほとんどアメリカでしょう。(他の国は)それを導入するスピードの違いだけですが、日本は導入するのが一番遅いのです。

 日本は非常にいい国で、安全だし、グリーディ(greedy=強欲な、貪欲な)な人は少ない。そういう国だから、日本に来たい人は非常に多い。そういういい点はあるのですが、今のままでは非常に遅れます。

 しかし、それは実はそんなに悲観する必要はなく、「先頭」に立つ勇気でなくてもいい、「フォロワー」でもいいのではないかと思っているところです。

長谷川 とにかく遅いでしょう。女性の進出も、1.2パーセントが10年で2.2パーセントになったりして、増えてはいますが、その間に世界中は30パーセントほどになったりするので、どんどん駄目になっているということです。

 なぜこんなに変わるのが遅いのかというのをずっと考えて、男社会だからとか、いろいろ考えました。一つには、きちんと議論をしない。あるいは、きちんと議論をするときにどうも忖度をして、本当はそう思っていないのに「そうですね」というようなことを言って会議を終わらせてしまう。そういう会議を何カ月もやっていると、変わらないでしょう。

 本心がないわけではないけれども、それをちゃんとパッと言って、「論点はどこだ」と詰めていく議論の仕方が下手なのです。だから、「そうですかね」と探り合いをしたり、忖度をしたりして、長い長い時間が過ぎるだけで、少しも変わらない。もっとオープンに、後腐れない議論をすることができるようにならないといけないし、変わる速度が遅すぎると思います。


●「スピードをどうやって上げるか」問題を突破するために


小宮山 スピードをどうやって上げるかが非常に重要ですね。よく「日本ではGoogleが出なかった」と言うけれども、Googleというのはアメリカでしか出ていません。だから、そういうものが出なくてもどうということはなく、出たものをいかにうまく取り入れていくかということだけです。

 例えばUberですが、今日本に来て(稼働して)いるのは自転車などを用いたUber Eatsだけといってもいいでしょう。本来のUberは…。

長谷川 タクシーなどとも関連しますね。

小宮山 それは日本には結局入っていかないでしょう。だから、たぶんここを突破するという問題ではないでしょうか。やはり小さな単位でやることを認めていくというほうがいいのではないかと私は思います。

 すぐ東京にUberを入れようという議論になってしまいます。ただ、たぶん日本の90パーセント以上の面積を占める(他の)土地では、Uberがあれば便利です。要するに誰かが運転する白タクです。それを日本全国行おうとするから駄目で、地域に任せればいい。

 地域に任せていることは結構あります。水利権の問題などは県に下りています。誰が持っているか分からない森林は九州の面積を超えるぐらいあるわけですが、今土地の所有権と木の所有権を分ける法律ができました。「木を切る」というのは自治体のヘッドが宣言しなくてはいけないのですが、それをやる人がいない。せめて今度は、そういうのを動かすことぐらいならできるのではないかと思っています。小さくても一つひとつ突破していく以外ないのではないかと。

長谷川 そうですね。

―― 確かに江戸時代の例も前回出ましたけれども、江戸時代は藩も小さいですし、その藩が一つひとつの小さな国のような形でしたから。


●なぜわれわれは生涯をかけて学ぶのか


―― というところですが、ここで(本編の)最後に一言ずつ、まとめのお言葉をいただければと思います。多岐に広がった今回のウェビナーでのお話を受けて、われわれが「生涯をかけて学ぶことの意味」について、一言で答えるという質問でもないですが、一言で答えるとするとどうなのかということを、最後に教えていただいてよろしいでしょうか。

長谷川 人間=ホモ・サピエンスという生き物はとにかく好奇心があって、学習し続ける素地のある脳みそを持っているので、ポテンシャルは誰よりもあります。だけど、このスピードで世の中が変わり、このスピードで複雑な問題が次々に出てくる時代、ずっと学び続けて自分の考えを改訂していくことは、前よりもずっと大事になっているのではないでしょうか。

―― ありがとうございます。

小宮山 似ているかもしれないですが、私は「分かっ...
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