渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『論語』で「義を見てせざるは勇無きなり」と説いた真意
渋沢栄一の生涯と教養としての『論語』(6)仁と義
田口佳史(東洋思想研究家)
「礼」を求める『論語』が最も大切にすることばが「仁」であるのは周知の事実だ。しかし、「仁」と現代社会が密接な関係にあることは忘れられがちである。「仁」とは人が生まれながらに社会に属することを示す言葉。社会性の中で生きるたしなみを説いたのが「仁」である。では、「義」とは何だろうか。(全9話中第6話)
時間:7分48秒
収録日:2020年3月3日
追加日:2021年8月22日
≪全文≫

●人が生まれながらに社会に属することを示す「仁」


 『論語』から学ぶこととして、『論語と算盤』という渋沢が書いた書物を参考にしていきます。この書物の中で彼が主張している『論語』に関することとは何か、さらに渋沢の考え方である「経済道徳合一論」を、彼は『論語』のどこから学んだのか、について申し上げていきたいと思います。

 当然の教えとして、『論語』が「仁」を説いているのはお分かりの通りです。そこで、「仁」とはいったい何かに少し触れてから、文章のほうに入ったほうが分かりやすいでしょう。

 「仁」というものは、人偏に二つと書いてあります。これは人間が2人です。組織論というものがどういう基底から始まっているかというと、2人の人間が共同するところから組織が始まる。1人を組織とは言わないわけで、2人以上の人間が寄り添うことです。

 人間というものは生まれながらにして社会に属している、社会の一員として自分は生まれてきたということを自覚せざるを得ないのが人間であるということを説いているのが、「仁」という字なのです。

 象徴的にいえば、仁がないと書く「不仁」という言葉があります。これは、漢方のほうでは半身麻痺のような症状を指すそうです。つまり、社会に関与していないというのは麻痺している人間の状態であるということを表しているわけです。


●あまく見られがちな「仁」を補佐する「義」


 「仁」を説く『論語』の最大の要点として、まず前提は言うまでもなく、人間が社会的な産物であり、社会の中で暮らしているということになります。山奥で一人で住んでいるなどということは成り立たないということを、まず前提にしております。まず、ここをよく知っていただくといいと思います。

 孔子はその上で「仁」を説いたわけですが、「仁」の訳語としてよく出てくるのは、慈悲心や思いやりのようなものです。これらは、どちらかというと「他人を慮る」ということを非常に強く要求する言葉です。

 こればかりになってしまうと、人間関係や社会が甘くなってしまうと言って、これを改めるべきだと主張したのが、100年後に生まれてくる孟子です。孟子は「仁」ばかりでは駄目だ、そこに「義」がなければ駄目だと言って、「仁」と「義」というものをペアで扱うべきだと言いました。

 「義」とは何かというと、自分の役割を責任を持って果たすことです...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦