死と宗教~教養としての「死の講義」
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地獄の話の「三途の川」「奪衣婆」は日本のオリジナル
死と宗教~教養としての「死の講義」(7)地獄と日本の葬儀文化
哲学と生き方
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
われわれが描く地獄のイメージは、道教の考え方がもとになっている。ただし「三途の川」や「奪衣婆」などは、日本オリジナルなストーリーで、迫力満点だ。毎年お盆が近づくと、家ごとに、死者を迎える準備をすることになっている。いったい「死」とはどういうことなのか。この機会に、正解のないこの問題について考えてみてはどうだろうか。(全7話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分48秒
収録日:2022年3月3日
追加日:2022年5月23日
≪全文≫

●道教の「十王思想」に仏教がミックスされた「地獄」


橋爪 さて鎌倉時代になると、貴族から金を巻き上げようにも、その貴族の財布が心もとなくなってきた。寺社も、荘園からの年貢の上がりが減ってきた。新しい資金源はないものか。これまで手つかずだった一般庶民から小口の資金をたんまり集めようという話になってきたのです。

 そこで、庶民を脅しつける一大キャンペーンの作戦が展開された。「おまえたちはいろいろ罪を犯しているだろう。そういう生活をしていると、バチが当たって地獄に行くんだぞ。地獄はこんなひどいところだぞ」というわけです。特にお寺をないがしろにして、支払いを怠るのが大変な罪である。

 親が死んだら、子を脅しつける。地獄に着くと、7日ごとに厳しい取り調べがあるので、それに合わせてお寺でお経を上げたりしなくてはいけない。四十九日、一回忌も大事。それから3年目、7年目、…とお祀りをして、そのたびごとにちゃんとお寺に支払いをしないといけない。「お寺にお金を払わないのが一番罪が重い」というお経があると都合がいいな、と。

―― なるほど。

橋爪 そこで、経典をでっちあげたのです。偽経ですね。これを「地蔵十王経」といいます。正式の名前は長たらしい。

―― 『仏説地蔵菩薩発心因縁十王経』ですね。

橋爪 そうそう。そういう名前のお経なのですが、「地蔵十王経」でいいでしょう。これを、あたかも中国で訳されたお経であるかのように、日本人が作文したわけです。

 これにはタネ本があります。中国から来た「十王思想」を記した「十王経」なのですが、これは道教のお経なので、仏教とは関係ありません。

―― 仏教ではないわけですね。

橋爪 そうです。道教では、人間は死んだら「鬼」になるんです。鬼=死者のことで、死者は地面の下にある地獄に行く。そして生前の罰を裁かれ、犯した罪に応じていろいろな地獄で罰を受ける。そのおどろおどろしいありさまが実に詳しく書いてあるのです。

 なぜ「十王」なのか。「王」といわれているは、地獄の役人で、まあ神です。それが十人いて、順に取り調べを受けます。その結果、最終的に処罰が決まるのですが、地獄にも厳しさの等級がいっぱいあります。

 ひどいところへ行かされるのは、不道徳や不品行が原因の場合もありますが、権力をかさにきて民衆をいじめたり、汚職や賄賂を取ったりするのが...

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