死と宗教~教養としての「死の講義」
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
仏教の死の考え方…釈尊は死ぬが因果法則を覚ればいい
死と宗教~教養としての「死の講義」(4)仏教の「死」・インド編〈下〉
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
すべてを因果関係であり、輪廻だとする仏教は、覚者である釈尊の死をどう伝えたのだろうか。直接の弟子たちは「宇宙と一体化して雲散霧消した」と考えたが、そもそも釈尊が覚りに至ったこと自体、ゴータマとして一代の修行のみが結実したとは考えない。そこに出家と在家、小乗と大乗の関係が絡んでくる。(全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分27秒
収録日:2022年3月3日
追加日:2022年5月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●釈尊は死んでどうなったか


―― 釈尊の亡くなる情景を描いた「涅槃の図」では、周りの弟子たちが嘆き悲しんでいます。仏教では、釈尊が死んだ後、どうなると考えているのでしょうか。

橋爪 輪廻するなら、別な生き物になるのが原則です。バラモン教、ヒンドゥー教では覚りをきわめたバラモンはご褒美として人間より上の天人になると考えていました。

―― 覚れるかどうかで、その後が変わってくるわけですね。

橋爪 覚るなら、素晴らしい原因を積んだことになるので、アップグレードします。バラモンは、もうその上がないので、天人になるのです。

 この考え方だと、天人になったのはいいけど、堕落したらまた人間になってしまう。輪廻は終わりがありません。

―― よく言われることですが、インドには厳しいカーストがあり、差別構造が保たれています。それらも、輪廻の考えにのっとっているわけですね。

橋爪 はい。人間がいて、トラがいて、ゲジゲジがいる。生物界には多彩な階層があります。それらがすべて輪廻でつながれ、因果関係で貫かれているのです。だから、人間にもいろいろあっても、因果関係に貫かれている以上、それは差別ではないのです。

 釈尊の弟子たちはバラモン教の考えを否定し、釈尊は覚っても天人になどならないと考えました。釈尊はバラモン以上の、本当の真理を覚った。それを覚れば、輪廻の法則の外に出てしまうから、もうなにものにもならない。死ねば雲散霧消して、宇宙と合体すると考えたのです。

―― なるほど。


●在家修行と空


橋爪 こうして釈尊は、覚って仏となったあと、死んで、どこにもいなくなってしまいます。しかし、その教えは残っている。釈尊の見つけた因果の法則は、この宇宙に永遠に満ち満ちている。

 だから、その気があれば、誰でも見つけることができる。その気があれば、誰でも覚ることができる。仏教にはいろいろな宗派がありますが、ここまではすべて共通です。

―― 覚ることができるという部分が、共通だということですね。

橋爪 覚る内容が因果法則だということ。そして、誰でもそれを悟れるということです。

―― よく仏教では、空(くう)という言葉を使います。この言葉がその因果関係を意味するのでしょうか。

橋爪 空は大乗教が言い出して、般若経にのべてあることです。大乗教の人びとは小乗と異なり、最初は出家者で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
イスラム教におけるシーア派とスンニ派の違い
イスラム教スンニ派とシーア派の違いとは?
山内昌之
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(2)60歳は折り返し地点
「悠々自適」は定年を正当化するための神話にすぎない
出口治明