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組織の最適規模化とプラットフォーム的機能…企業のあり方

失敗する日本企業の構造と改革への宿題(4)これからの企業のあり方

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
これからの企業のあり方として、規模が大きいということよりむしろ小回りのきく小さな集合体で機能させるほうがメリットは大きい。昨今の技術革新を踏まえると、そのほうがスピーディな意思決定を可能にし、それによって新たな試みにも踏み出しやすいからだ。その意味で大企業が生き残る道は、いろいろな分野のベンチャー企業を連携させるプラットフォームとしての機能を果たすことではないか。そのための全体マネジメントができる人材が今後ますます重要となってくるだろう。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:02
収録日:2020/11/18
追加日:2021/01/13
≪全文≫

●「会社は大きいほうがいい」のは過去の話


―― あと二つお聞きしたいのですが、一つは、会社の中をどう変えていくかということです。2022年にパナソニックが持株会社制へ移行します。これまでかなり厳格な事業部制を実施していた会社ですが、それを完全に切り分けていくという方向性を出しました。あのような方向性はこのシリーズでの柳川先生のお話からすると、正しいということになってくるんでしょうか。

柳川 これも本当は少し産業によって違うと思いますし、それぞれの会社の規模によっても違うと思うんですが、経済学的に見たときの大きな流れでいくと、基本的に今までというのはとにかく会社が大きいことにメリットがあるという方向できたと思うんです。なので、どの会社もできるだけ資金調達をして大きくなろうとしてきました。

 それは合理的な面もあったと思います。やはり大きい会社であればある程度資金調達もしやすいし、投資もしやすく、人材もいい人材が集まる。何よりも、大きな設備投資をしないとなかなかできない産業分野が多かった。大きくてしっかりとした設備投資ができれば、その産業がリードできるというような、こういう構造があったと思うんですね。


●技術革新によって大企業は小さな企業の集合体という形に変わっていく


柳川 ところが、今起きている技術革新というのは、基本的に大きな設備投資をあまり必要としない分野が多くなってきています。場合によると、ほとんど設備投資を必要としないで、人の知恵だけで会社が回っていくような部分はあるわけですね。

 そうなってくると、全体的にいえることは、どちらかというと今まで規模を追い続けてきたんだけれども、それよりも最適な規模が小さくなってきているということです。もし会社の規模はもうちょっと小さい方が小回りがきくし、必要な資源もそこで投入できるという構造になりつつあるとすれば、かなりの産業、かなりの企業でいかに全体的に大きく肥大化した企業をもうちょっとスリムなものにしていくか、あるいはパナソニックの例のように小さい企業のかたまりに分割していって、それぞれがより機動性を持つような形にするか。そうしたことが必要になってきていると思うんですね。

 もちろん一から小さい会社をつくっている場合は、そういう話は考えなくていいですが、産業によってはいまだに大きな設備投資が必要な分野も...
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