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脱炭素は可能か?気候変動問題の現状と日本の問題点

COP26と気候変動問題の行方~世界の取り組みと日本の課題

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
気候変動問題が深刻化する中、世界で足並みを揃えた取り組みが求められている。2021年に開催されたCOP26では、2030年に向けた各国の数値目標とそれに向けた具体的な計画が発表された。日本は、環境問題に対する意識の遅れがたびたび批判されているが、どのような取り組みが示されたのか。
(2022年1月18日開催島田塾年頭講演「激動と激変の時代:日本の選択」より)
時間:10:13
収録日:2022/01/18
追加日:2022/05/03
キーワード:
≪全文≫

●気候変動対策に向けた世界の取り組み


 気候変動問題が大変なことになると最初に言った人は、どうやら2021年にノーベル賞を取られた真鍋淑郎博士です。彼が大気と海洋の大循環をつないだ「結合モデル」という数値モデルをつくり、これが先駆けになって、そのあとの科学者の皆さんがもう何百人、何千人という規模で分析をして、国連が1992年に、国連気候変動枠組み条約を締結しました。これによって、世界で進めるための条約づくりをしたのです。その条約のもとで、あのCOPができました。

 COPは“Conference of the Parties”の略で、枠組み条約の会議です。京都議定書とパリ協定は画期的です。京都議定書は1997年に京都で開催され、温暖化防止のために、世界で初めての国際協定書をつくりました。これは何かというと、2008~2012年の5年間で、先進国全体で5パーセント以上の温室効果ガスの削減を目指すというものです。これを一番推進したのはアメリカの大統領候補だったアル・ゴア氏です。しかし、彼は選挙に負けて、共和党のジョージ・W・ブッシュ氏が大統領になってしまいました。『不都合な真実』という本を書いていて、ものすごい知識人なのですが、うまくいきませんでした。

 次はパリ協定です。これにはなんと中国も参加しました。実をいうと、中国とアメリカのイニシアティブで全世界が参加して、地球の大気の平均気温の上昇幅を、2050年までに産業革命前に比べて1.5度以下に抑えるために努力することになりました。これはかなりの歴史的イベントだったのですが、トランプ氏がくだらないと言って出てしまったので、機能不全になりました。

 そこにバイデン氏が再び参加し、2050年は遠すぎるので、2030年の目標をみんなに言ってもらおうということで、40カ国が参加して、2021年2月にやりました。菅氏によると、最初、経産省の積み上げ(試算)だと温暖化対策として2013年に対して40パーセントまで削減できるということでしたが、それがイギリスは50数パーセントと言っているので、恰好がつきません。おそらく小泉進次郎氏が猛烈に説得したのではないかと思いますが、46パーセントとポツンと言って、その数値が今の日本の長期計画の基本になっています。

 COP26はイギリスで開催されました。これは、パリ協約の努力目標を「世界共通の目標」に格上げしました。そのため、カーボンニュートラルを実現するための最も重要な中間点だとジョンソン首相は言っています。


●IPCCの報告結果と日本の具体的な数値目標


 実はIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change、気候変動に関する政府間パネル)で、約60カ国234人の科学者が共同執筆している大レポートがあります。1万4000以上もの論文を引用していて、査読レビューが7万8000件というので、すごいのです。要するに、人類の知恵を全部集約したような報告書です。

 ここではっきり言っているのは、人類の活動が温暖化を導いているのではないかというのがこれまでの考え方だったのですが、それを断定しました。もう異常気候も何もかも全部、人類のせいだと断定しています。それも莫大な調査研究に基づいているので、これが基本になっています。
 
 IEAという国際エネルギー機関があるのですが、もし2050年に目標を達成したいのであれば、2050年時点での再エネの比率は90パーセントでないといけないと言っています。太陽光と風力が70パーセントと言っていて、あとは原子力や水素です。この実現が一つでも欠けると、目標を達成できません。そうすると、太平洋の島嶼国は沈んでしまいますし、北極と南極の氷は溶けてしまうなど、地球は大変なことになります。

 COP26は、12日間で片付けようとしたのですが、片付かず、2日延ばしてやったのですが、「1.5度を目指して努力、追及しましょう。そして、石炭火力は禁止しましょう」とジョンソン氏が言ったのですが、これは段階的な対応になりました。

 日本がここに出している最新のエネルギー基本計画があります。基本計画は5年ごとに改定するのですが、2021年に出しました。ここで言っていることは、次のことです。今、日本が持っている実績値は2019年です。現行計画があり、ここで2030年に何をするかが示されています。今度できたこの新計画は6次計画なのですが、ここでも新しいことが言われています。例えば2つのことについて言っています。

 一つは、再生エネルギーはどうかというと、全体のエネルギー構成の中で実績は18パーセントです。今の計画では、それ...
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