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超大学と逆参勤交代、各地に創造的な人材育成の場をつくる

2022年頭所感(2)創造的な人材育成のために

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
日本各地で創造的な人材を育成していこうという動きが非常に強くなっている。軽井沢にある「軽井沢風越学園」や秋田の「AIU(国際教養大学)」など、国際性があり創造性あふれる若者を育てることを目標に、それぞれ独自の取り組みが行われている。また、「超大学」や「逆参勤交代」といった試みで人の流動化を促し、各地に創造的な人材育成の場をつくる動きも活発になっている。(全2話中第2話)
時間:07:45
収録日:2021/12/01
追加日:2022/01/01
≪全文≫

●創造的な人材育成への取り組みが全国的に広がっている


 そしてこれが最後ですが、第三に創造的な人材を育んでいく動きが非常に強くなっていることを感じます。教育が変わって、人が創造的に変わって、そして社会が変わっていくという循環が非常に顕著に生まれ出すのではないかという期待を抱いています。

 例えば、軽井沢という町に「軽井沢風越学園」という個人でつくった学園があります。自然に学び、創造的な子どもたちを育てようという思いで新しくできたのです。そういうところには吸引力があって、そこに子どもを行かせたいということで、人口の流入が起こり出しているという話を先月、軽井沢の町長さんから聞きました。軽井沢には他に、「ISAK(International School of Asia at Karuizawa)」と呼ばれる学校があります。やはりここも、国際性があって創造性のある若者を育てることを目標としていて、吸引力になっています。

 同じく先月、「AIU(Akita international University)」という、秋田にある国際教養大学のモンテ・カセム学長にお会いしました。一学年100人なのですが、全員が4年のうち1年は提携校である海外で学びます。いわゆる交換留学です。提携校からはAIUに来て、AIUの学生は提携校に行く。1年間海外で学び、海外から来た子どもたち、あるいは国内の子どもたちは視野を広げる。そして、彼らが社会課題の解決に参加することを目指しているということをカセム学長は明確に語っています。

 また、岐阜県の飛騨高山大学が2024年に開校する予定になっています。そこには今、慶應義塾大学の教授である宮田裕章先生という、40代の極めて素晴らしい方が行く予定です。大変ユニークな格好でテレビにもしばしば登場しています。ここでは、全国に10か所ほどの拠点をつくって、そこでその場の課題に対峙していきます。「地域から世界へ文化を発信する」ということをうたい文句にしています。今、地域は衰退しつつあり、これは未来の世界の姿でもあるのですが、「衰退するままでいいのか」という問いに対して「いや、そうではない。地方から新しい文化を発信する」という姿勢を持っています。これは素晴らしい試みだと思います。


●「人の流動化×創造的な人材養成の場」の掛け算で日本を変える


 また、大学がなくてもこうした取り組みは可能です。例えば種子島では、19の大学の人たちが出たり入ったりして、最先端の技術を種子島に入れていこうという実験をしています。そこに大学生が行って、種子島の高等学校で指導することで、高校生がそうした技術を学びます。その高校生に、種子島をこれからどうするのか、自分が種子島の市長だとしたらどうするのかをグループワークで勉強させ、その発表会を公開でやります。そうすると、島の市民の方が皆、聞きにきます。最近では、現役の市長さんがそこに参加して、高校生たちと本気で議論しています。こうしたことが社会課題の解決につながるし、人の成長につながる。高校生もそうですが、市長さん自身も成長するのです。これが、これからの人材育成の仕方なのではないかと思います。皆で成長し合っていくことが、私の考える「超大学」です。大学がなくてもやれるということで、「超大学」と呼んでいるのです。

 それからそういう創造的な人材を、社会課題の解決を通じて養成していこうという動きが随所にあり、私たちはそこに「逆参勤交代」を提案して、それを実行しています。これは参勤交代の逆です。参勤交代は期日を限って地方から江戸に来ることですが、それに対して逆参勤交代をすることで、人が流動化する。流動化した拠点には、創造的な人材を生む場がさまざまある。つまり、「人の流動化×創造的な人材養成の場」という掛け算です。この掛け算を日本につくるという動きが(2022年に)大きくなっていく気がします。

 ということで今日申し上げたように、私は非常に大きな希望が三つあると思っています。一つ目は、新しいスタートアップが今の10倍くらい生まれ出すことです。二つ目は、「課題先進国」日本を「課題解決先進国」にする試みが随所で生まれていることです。三つ目は、そういうことが相乗的になって、創造的な人材が育つ国へと日本がなっていくことです。こうしたことが大きく動き出す1年になったら良いなと、またそうなるのではないかという希望を持っています。
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