優れた経営者の条件
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
グローバル化の壁である英語は通じさえすればいい
第2話へ進む
経営者のセンスは担当者のスキルとは全く違う
優れた経営者の条件(1)スキルとセンスの違い
経営ビジネス
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
経営のセンスとは何か? センスのある経営者の条件はどのようなものか? 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏が解説するシリーズ講義「優れた経営者の条件」の第1回。今回は、担当者と経営者の違いがスキルとセンスにあるということを見ていく。(2017年11月16日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「優れた経営者の条件:戦略ストーリーを創るセンス」より、全8話中第1話)
時間:11分59秒
収録日:2017年11月16日
追加日:2018年1月27日
≪全文≫

●担当者と経営者の違いは、スキルとセンスの違い


 私は競争の戦略という分野で研究をしています。世の中は厳しいもので、こういった研究をしていると、大方の人から日々「金を返せ」という感想を頂きます。私のように実際に商売をしていない人間が、いろいろと生意気なことを言っているからということもあります。

 一番多い苦情は、「話は分かるけれども、全く実用性がない」というものです。私の本を読んでも、どうすれば優れた戦略をつくることができるのか書いていないというわけです。こうした感想にもちゃんと返事を差し上げることにしています。「あきらめが肝心です」と。

 どういうことかお話しします。結局、担当者と経営者は全く違う存在であるにもかかわらず、2つを混同するところからさまざまな悲劇と喜劇が生まれてくるのです。

 経営者といっても、何も社長や役員といったタイトル(肩書)のことではありません。むしろ、「商売の塊を丸ごと動かす人」のことを、経営者や経営人材と呼ぶことにしています。自分でどうやって稼ぐか考えて、物事を動かしていく人のことです。

 当たり前のことですが、担当がないのが経営という仕事です。定義からして、経営者は担当者とは違うわけです。

 担当者と経営者の違いは、スキルとセンスの違いに還元できるでしょう。非常に単純な話です。あなたの仕事はここからここまでです、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)はこれです、いつまでに達成してください、と言われたとしましょう。担当者であれば担当分野のスキルが物を言うでしょう。ところが、商売を丸ごと動かす経営者になると、センスとしか言いようのない世界に入っていきます。

 スキルとは、例えば国語・算数・理科・社会といった教科です。他方、「女にモテる」というのはセンスの問題です。要するに、担当者と経営者はここが違うのです。モテない人は何かのスキルが不足しているからモテないのではありません。向いていないだけなのです。


●センスを育てる方法はない


 まずスキルとセンスは、ベクトルが逆向きです。スキルは全体が部分に分かれて初めて出てくるものです。つまり、ファイナンスのスキルや会計のスキルといった、まるで会社の部門の名前になっているようなスキルセットがたくさんあります。

 英語ができるのもスキルです。プレゼンテーションのス...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)膠着する日本経済の深層
日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは
西山圭太
行動経済学とマーケティング(1)「行動経済学」とは何か
人間はそれほど合理的ではない…行動経済学の本質に迫る
阿部誠
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
部下を育てるには、まず佐藤一斎に学べ!
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子