ストーリーとしての競争戦略
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
スターバックスのコンセプトは「サードプレイス」
ストーリーとしての競争戦略(6)事例に見る経営者の戦略
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏が、ホットペッパーとスターバックスを事例として、コンセプトの重要性を解説する。スターバックスやホットペッパーは、「第3の場所」・「狭域情報」といったコンセプトを的確に定義し得たからこそ、様々な戦略をストーリーとして一貫して展開することができた。(2017年5月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件」より、全9話中第6話)
時間:10分47秒
収録日:2017年5月25日
追加日:2017年7月18日
≪全文≫

●第3の場所を売るというコンセプト


 商売においてコンセプトがいかに重要かということを、次にスターバックスを例にして見てみましょう。有名な例ですが、CEOだったハワード・シュルツ氏によれば、スターバックスはコーヒーを売っていません。確かにコーヒーを売っているように見えるかもしれませんが、本当に売っているのは「第3の場所」、サードプレイスなのです。これがスターバックスのもともとのコンセプトです。

 1987年当時のアメリカは、レーガン大統領時代です。新自由主義、小さな政府、競争社会、自己責任の時代でした。70年代と比べると、アメリカ社会のテンションが格段に上がってきていました。セカンドプレイス、つまり職場では、コンペティション(競争)をしているふりだけでもしないと、ホワイトカラーの役員でさえ首になってしまう状況でした。また、アメリカ人はファーストプレイス、つまり家に帰っても自分の配偶者の前では一番素敵でなければなりません。もちろん家庭によるでしょうが、日本人とは違います。“I love you, honey”と言うふりだけでもしないと、離婚となってしまいかねないということで、つまり、家庭でもテンションが高いのです。一体どこで休まるのか、という人がたくさんいました。

 スターバックスはこうした人たちに、第1・第2の場所に対する、第3の場所を売ることをコンセプトにしました。日常的に30分間駆け込める避難所です。例えば、380円は第3の場所を30分利用し、テンションを下げる料金なのです。もちろんコーヒーも付いてきますが、それはリラックスするのに良いツールだからです。これが、第3の場所を売るというコンセプトでした。


●狭域情報を売る商売


 また、リクルートのホットペッパーのコンセプトにも、大変興味深いものがありました。ホットペッパーが始まったのは、パソコンベースのインターネットが一通り普及し終わった頃でした。事業に携わっていた平尾勇司氏は、当時、僕によくこう言っていました。インターネットが普及しても、日本人はブラジルの床屋にもポルトガルのレストランにも、興味を持たないでしょう。要するに、人間の消費の8割は半径2キロ以内で起きていて、ネットが普及しても、それはそんなには変わらないということです。だとすれば、東京市場というものもまた存在しない、ということになります。リアルに存在する市場は、例えば(恵比...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
億万長者への道(1)お米屋さんから不動産業界へ
「背広を着てビジネスがしたい」との思いから宅建取得
高橋誠一
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎