ストーリーとしての競争戦略
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
商売の戦略はストーリーだというのは当たり前の話
ストーリーとしての競争戦略(2)因果論理のつながり
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏が、ストーリーとしての競争戦略の意味を解説する。井原西鶴の時代から、戦略は「儲け話」としてストーリーだった。事業で長期利益を上げるためには、競争相手との違いを作らなければならないが、その違いを因果論理のつながりで結び付けていく必要がある。(2017年5月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件」より、全9話中第2話)
時間:9分43秒
収録日:2017年5月25日
追加日:2017年7月4日
≪全文≫

●稼ぐ力の実態は常に事業にある


 「稼ぐ力」についていえば、「企業」と「事業」の2つは、必ずしもイコールではありません。例えば、こういうケースが一番典型的です。会社は、何らかの商売の塊、事業の器です。大きな会社になると1つの器の中に、さまざまな商売の塊(事業)が入っています。会社全体を代表する人の一つの役割は、資本市場における競争に相対することです。こうした、競争や戦略、経営者といった要素は、この図の下に位置します。つまり、ある商品なりサービスがあって、お客さまがいて、競争相手がいて、どこが儲かっていて、どこが儲からないのか、といった話は、全て事業レベルで起きていることです。もちろん、1つの事業に集中している会社であれば、結果的に会社全体の社長と事業の経営者がイコールになりますが、そうでないケースも多いでしょう。ですから、以下の話の主語は、すべて事業経営者だと考えてください。

 もちろん会社は、法人という形で法的な裏付けを取るといった点で必要ですが、「稼ぐ力」という点ではあくまでフィクションです。実態は常に事業の方にあります。「事業」が主で「会社」が従だという、この主従関係が大切です。

 これがひっくり返ると、東芝のような不健康な状態になるのではないでしょうか。いろんな問題があるでしょうが、根底的な問題の一つは、個々の事業の「稼ぐ力」をないがしろにして、本社が前に出すぎたということです。例えば、しばらく前のパソコン事業の問題です。本来は、競争の中でパソコン事業がどうやって稼いでいくのかということが肝心のはずですが、本社が僭越にも、「稼ぎが足りないからもっと数字を出せ」とか、「チャレンジしろ」などと口を出してしまったのです。これでは、主従関係が逆転してしまいます。リードしすぎだ、ということです。

 僕の個人的な好みでは、事業経営者がでかい顔をしているのが、良い会社です。会社という器は、本来、それぞれの商売がフルに力を発揮して稼いでいくためのサポートをするものであるべきなのです。


●戦略とはストーリーである


 こうした中、競争戦略というものは、事業で長期利益を出す手段として位置付けられます。話は極めて単純で、要するに、競争相手との違いをつくるからこそ選ばれるということです。「ストーリーとしての競争戦略」と言っているのは、さまざまな違いを長期利益に向け...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎