ストーリーとしての競争戦略
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ほ乳瓶メーカーと婚活ビジネスのストーリーとしての戦略
ストーリーとしての競争戦略(3)戦略は順列だ
経営ビジネス
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏が、ストーリーとしての戦略について具体的事例から解説する。ピジョンは、ものづくりの力をストーリーの要素とすることで成功した。IBJもインターネットだけでなく、アナログなサービスを取り入れ、他社と戦略的な差を生み出している。戦略は組み合わせではなく順列なのだ。(2017年5月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件」より、全9話中第3話)
時間:8分10秒
収録日:2017年5月25日
追加日:2017年7月7日
≪全文≫

●ものづくりの力と戦略的な位置取りのつながりが利益を生む


 ストーリーとしての戦略の具体的な事例を見てみましょう。ピジョンという会社は儲かっていますが、それはすごく良いほ乳瓶を作っているからだと言われています。値段は高いかもしれないけれども、顧客が価値を感じて高い値段を払ってでも買うので、世界中で儲かっています。これだけだと、ものづくりの力というよくある話です。ところが実際には、ものづくりで売っている会社でも、儲かっていないところも多くあります。ポイントは、ものづくりの力は確かに大切ですが、それは戦略、ストーリーを構成する一つの要素にすぎない、ということです。他のいろいろな打ち手とつながって、利益が出るのです。

 例えば、ピジョンの重要な戦略の一つとして、「18カ月以上は追うな」というものがあります。つまり、生後18カ月以下のマーケットで絶対に勝負をする、と。生後18カ月までは、人間は言語を持ちません。言語は文化そのものですから、文化がないと言ってもいいでしょう。この段階では、本当に良いほ乳瓶を作れば、世界中どこへ持っていっても、相手の文化にかかわらず、必ず良いと思ってもらえるのです。反対に、18カ月を過ぎると言葉が出てきて、文化や生活スタイル、宗教、親子関係、食べ物といった違いが関わってきます。こちらが良いと思ってコストをかけて作り込んでも、向こうが良いと思うかは分かりません。

 つまり、ものづくり・商品開発にかける大変なコストがグローバルに報われるのが、生後18カ月までのマーケットであり、そこから先は絶対に追うな、という戦略です。これが他の競争相手との一つの違いになります。普通は、こうした最も若いマーケットで顧客をつかまえると、その顧客ベースをどんどん引っ張っていき、子ども服などへ広げていくものです。しかし、ピジョンはそうしたことをしません。このように、ものづくりの力と戦略的な位置取りがつながって、利益が出ているのです。これが、戦略がストーリーになるということです。


●IBJの成婚率が高い理由


 もう1つ例を挙げましょう。僕の世代でIBJというと、The Industrial Bank of Japan、つまり日本興業銀行(興銀)でした。しかし今東証一部に上場しているIBJは、婚活サービスの会社です。婚活というと、最近はちょっとしたオポチュニティーですので、ありとあらゆる会社が参入してい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
ウォーレン・バフェットの成功哲学(1)「世界一の投資家」の実像
世界一の投資家ウォーレン・バフェット…賢人と呼ばれる理由
桑原晃弥
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
リーダーの心得…幕末の偉人たちを育てた佐藤一斎に学べ!
田口佳史
新しい学び直しの方法と可能性
技術革新で「学び直し」は廉価に国境を越える
小林りん

人気の講義ランキングTOP10
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大