ストーリーとしての競争戦略
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ほ乳瓶メーカーと婚活ビジネスのストーリーとしての戦略
ストーリーとしての競争戦略(3)戦略は順列だ
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏が、ストーリーとしての戦略について具体的事例から解説する。ピジョンは、ものづくりの力をストーリーの要素とすることで成功した。IBJもインターネットだけでなく、アナログなサービスを取り入れ、他社と戦略的な差を生み出している。戦略は組み合わせではなく順列なのだ。(2017年5月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件」より、全9話中第3話)
時間:8分10秒
収録日:2017年5月25日
追加日:2017年7月7日
≪全文≫

●ものづくりの力と戦略的な位置取りのつながりが利益を生む


 ストーリーとしての戦略の具体的な事例を見てみましょう。ピジョンという会社は儲かっていますが、それはすごく良いほ乳瓶を作っているからだと言われています。値段は高いかもしれないけれども、顧客が価値を感じて高い値段を払ってでも買うので、世界中で儲かっています。これだけだと、ものづくりの力というよくある話です。ところが実際には、ものづくりで売っている会社でも、儲かっていないところも多くあります。ポイントは、ものづくりの力は確かに大切ですが、それは戦略、ストーリーを構成する一つの要素にすぎない、ということです。他のいろいろな打ち手とつながって、利益が出るのです。

 例えば、ピジョンの重要な戦略の一つとして、「18カ月以上は追うな」というものがあります。つまり、生後18カ月以下のマーケットで絶対に勝負をする、と。生後18カ月までは、人間は言語を持ちません。言語は文化そのものですから、文化がないと言ってもいいでしょう。この段階では、本当に良いほ乳瓶を作れば、世界中どこへ持っていっても、相手の文化にかかわらず、必ず良いと思ってもらえるのです。反対に、18カ月を過ぎると言葉が出てきて、文化や生活スタイル、宗教、親子関係、食べ物といった違いが関わってきます。こちらが良いと思ってコストをかけて作り込んでも、向こうが良いと思うかは分かりません。

 つまり、ものづくり・商品開発にかける大変なコストがグローバルに報われるのが、生後18カ月までのマーケットであり、そこから先は絶対に追うな、という戦略です。これが他の競争相手との一つの違いになります。普通は、こうした最も若いマーケットで顧客をつかまえると、その顧客ベースをどんどん引っ張っていき、子ども服などへ広げていくものです。しかし、ピジョンはそうしたことをしません。このように、ものづくりの力と戦略的な位置取りがつながって、利益が出ているのです。これが、戦略がストーリーになるということです。


●IBJの成婚率が高い理由


 もう1つ例を挙げましょう。僕の世代でIBJというと、The Industrial Bank of Japan、つまり日本興業銀行(興銀)でした。しかし今東証一部に上場しているIBJは、婚活サービスの会社です。婚活というと、最近はちょっとしたオポチュニティーですので、ありとあらゆる会社が参入してい...

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