航空機事故ゼロをめざして
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
航空機事故の最後の課題は、組織の信頼性と安全管理
航空機事故ゼロをめざして(6)組織管理の不徹底
鈴木真二(東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授/福島ロボットテストフィールド所長)
これまで、技術課題の克服や訓練方法、観測装置の改良によって、航空機事故への対策がなされてきた。残された大きな課題は、組織全体の信頼性・安全の管理であると、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏は指摘する。2013年のボーイング787のバッテリー問題の原因は何だったのか。(第6話)
時間:10分48秒
収録日:2017年10月30日
追加日:2018年2月7日
≪全文≫

●安全性を高めるための自動化システムが事故をもたらす


 次に、高度な自動化がもたらす罠についてお話します。マイアミ空港付近での墜落事故では、パイロットが自動操縦に設定していたにもかかわらず、それが知らないうちに切れてしまったということがありました。これは飛行機の安全性を高めるために搭載されている自動化システムが、逆に事故をもたらすという皮肉な例です。

 同様な例は、さまざまな事故から見て取ることができます。その一例として1992年、フランスのエア・アンテール航空A320便の墜落事故を見てみましょう。1月20日、ストラスブール空港へ着陸中の機体が、15キロメートル手前の山中に墜落しました。夜間飛行であったため、山に近づいたことにパイロットが気付かなかったのです。しかし、実は飛行中に着陸滑走路の変更があり、自動操縦への入力を乗務員が途中で切り替えていました。

 正常であれば3.3度の降下角で滑走路に下りることができたはずでしたが、データ上は毎分3,300フィートの降下をしていたということが分かりました。自動操縦装置には、飛行機が降下する際の角度を指定する方法と、降下率を指定する方法の2つの方法があります。つまり、この事故では入力する方法を誤った可能性があるのです。


●コンピューターは指示された命令にしか従えない


 この機体には、上昇速度と経路角を切り替える制御盤が、操縦席の窓ガラスの下に設置されていました。中央のトグルスイッチを押せば、2つの指定方法が切り替わります。数値自体は一番右にあるダイヤルを回すと表れて、上昇速度または経路角が表示されます。しかし、どちらも2桁でしか表示されない設計になっており、そのために乗務員が設定を間違えたのではないかと疑われています。

 やはり自動操縦への指定方法とその表示方法に課題があったということで、その後は、沈下率が4桁で表示されるように設計が変更されました。自動化システムとはいえ、コンピューターは指示された命令にしか従えません。よって、間違った数値を指定すれば、間違った飛行が起きてしまうことになります。

 ただし、地表に近づいていることが事前に分かれば、事故を回避できたでしょう。当時のフランスでは、地表に接近したことを知らせる警報装置の設置が、まだ義務付けられていませんでした。現在の全ての旅客機には、地表に接近したことを知らせるGPWS...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
認知バイアス~その仕組みと可能性(2)創造のバイアス〈前編〉
創造の「4段階説」、ひらめきには準備が必要
鈴木宏昭
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部