●航空機はマイクロバーストに遭遇すると風向きが変化する
次は、自然の脅威が原因となって発生する航空機事故について、そしてそれをいかに防ぐかについてお話しします。
1975年、イースタン航空66便はニューヨークのJFK国際空港に着陸する際、着陸に失敗してしまいました。当初はパイロットエラーが疑われましたが、シカゴ大学のフジタ博士は、マイクロバーストと呼ばれる異常気象による、ウィンドシアが原因であることを突き止めました。
マイクロバーストとは、局所的な下降風が地面に当たって、気流が周囲に流れる現象です。着陸中の航空機がこれに遭遇すると、風向きが変化します。マイクロバーストに近づくときには前から風が吹き、途中で下降風に変わり、最終的には後ろから風が吹くという状況に変わるのです。
飛行機にとって風向きは非常に重要です。特に離着陸の際には、揚力を維持するために前からの風、つまり向かい風の状態で飛行することが求められます。しかし、マイクロバーストに遭遇すると、当初は向かい風だったものが、途中で追い風に変わってしまうのです。そうすると、主翼に発生する揚力が低下し、高度も低下してしまうので、エンジン推力を上げ高度低下を防ぎます。
ただ、ジェットエンジンの構造上、推力を上げるようにスロットル操作しても、すぐに推力は上がりません。そこでパイロットは操縦桿を引いて機首を上げ、高度を上げようとしますが、機首を上げれば主翼が失速するという空力的な現象が起きかねません。このため、イースタン航空66便は、急激な機首上げ操作を行ったために失速し、墜落してしまったと考えられたのです。
●レーザー光線を用いた計測システムが空港に設置される
マイクロバースト対策として、さまざまな方法がその後、考えられました。一つは空港での対策です。異常気象が起きているということを、パイロットと管制官にいち早く通知するために、LLWAS(低層ウィンドシア警報装置)が開発されました。飛行場には風向や風速、気圧、温度等を測る装置が付いています。通常は1カ所に設置されていますが、これを滑走路の周囲にたくさん配置して、局所的な気象の変化をいち早く察知しようとするものです。ただし、こうした警報システムが整備されても、マイクロバーストのウィンドシアによる墜落は絶えませんでした。
その後、より詳細な気象観測を可...